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2 小学校の英語教育について
1)適切な学習時期と内容    (2018.6.21 改訂)
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1)英語教育を始める時期について

2)効率的な英語教育とは?

3)効率的に成果があげられると思われる、学習時期と内容

 ①小学校1,2年 (幼稚園児なども含む)
  正しい英語の発音に触れ、単純に英語を楽しむ時期

 ②小学校3,4年
  英単語の正しい読み方を覚えながら英語を楽しむ時期

 ③小学校5年6年
  簡単な文法を覚え、英文の意味をしっかり理解する時期


 ④指導範囲を早めに終わった時
  復習が大切。遊びの時間にしてしまうともったいない


(緑の文字の文は、私の経験した、ただのエピソードです。参考までに、時間があればお読みください。)


1)英語教育を始める時期について


 以前は、有識者と呼ばれる方々から、「英語学習より、国語学習の方が大事であり、子供たちに早くから英語を教える必要はない。英語学習は中学からで十分。」という意見も多かったと思います。しかし、教育行政の方針転換で、2020年頃から、小学校でも、英語を教科として学習することになりました。
 
 私自身は、ニュージーランドの高校生を、市内の小学生や中学生と交流させる事業や、ボーイスカウトの国際交流をお手伝いした経験から、小学生の方が圧倒的に、積極的に外国人と交流できると思っていたので、良い傾向と思っています。また、勉強が得意でない生徒や、人前で話すことが苦手な生徒は、中学からでは、英語の習得に時間がかかり過ぎると感じていました。よって、小学生から、しっかり英語を学べる環境になることは、大歓迎です。



2)効率的な英語教育とは?
…英会話スクールのような英会話と教科としての英語の違いから思うこと

 私が、英語塾の講師をしていた頃、「小学生の頃から英会話をずっとやっていて、英検4級も取りました!」というような生徒が、中学2年生になると、学校の英語が全くわからなくなるという現象を、数多く見てきました。どうしてこのようなことが起こるのでしょう。

 
一般的な英会話教室では、「日本語と英語の文法の違いを、あまり教えない」ということが原因であると、私は思っています。何となく英会話をしていると、何となくできるような気がする。しかし、「何となく」はあくまで「何となく」なのです。英語を日常生活で使う機会の少ない日本では、「自信を持って英語を話していくために必要なもの」…それが、文を組み立てるのに役立つ「英文法」だと思います。

 私の生徒の中に、勉強が苦手な生徒がいました。小学校では5段階評価で5を一度も取ったことがなく、中学1年入学前の3月に、私が塾で英語を教え始めました。塾は週に1度、90分しかないので、マイノートを作ってもらい、初めは「be動詞の現在形だけ」、「肯定文、疑問文、その答え方、否定文」を何度も毎日音読してスラスラ言えるように練習してもらいました。完璧にできてから、一般動詞を教えるようにした結果、中学3年間、殆どの学期で、彼女は、英語で5段階評価の5を取ることができました。その生徒の母親も、人生で「5」という評価を見たことがなかったということで、非常に喜んでくれましたが、何より、本人が、他の教科の勉強にも一生懸命取り組むようになったことに驚きました。

 初歩的な文法さえしっかり理解し、スラスラ英文を音読できるようになれば、難易度が上がる中学2~3年の文法の学習をスムーズに進めることは、それほど大変なことではないと、私自身思うようになりました。

 それでは、英会話スクールは無駄でしょうか。もちろん、そんなことはありません。
  1. 正しい発音が身につく
  2. 恥ずかしがらずに、英語を言えるようになる
  3. 楽しみながらたくさんの単語を覚えられる
      
いろいろな良い点があります。毎日英会話スクールに通っていたら、どんどん英語が話せるようになるでしょう。しかし、そうするには、莫大なお金がかかります。普段英語を使う機会が少ない日本で英語を勉強するのは、外国で勉強するのとは、全く環境が違います。ただ漠然と学ぶより、しっかり英文法を踏まえて勉強していく方が、日本国内で勉強するには、ずっと効率的な勉強法であると、色々な生徒を見て、教えてきて感じました。

 また、私は、色々な国の海外ボーイスカウトの受け入れや、塾で中高生を教える中、日本人が学ぶ英語は、まず、ネイティブ的流暢さよりも、第2外国語として、相手に通じる言い回しを覚えることが重要なのではと思うようになりました。ネイティブ的流暢さは憧れますが、多民族の中で英語を話す時重要なのは、流暢さより「通じること」なのです。皆さま、いかが思われますか?



3)効率的に成果があげられると思われる、学習時期と内容

 以上のような経験を踏まえ、どのような英語教育が効率的か、小学校1,2年生、小学校3,4年生、小学校5,6年の3段階に分けて、書いていきたいと思います。
 なお、ここで書く指導法は、ごく一般的な生徒を対象に考えています。特に勉強ができる生徒や、英語を使える環境にある生徒などについての最適な指導法ではありません。


小学校1,2年 (幼稚園児なども含む)
 
 正しい英語の発音に触れ、単純に英語を楽しむ時期

 
《ゲームや歌などを通して、楽しく英語に親しみ、日常的に使う単語の「発音と意味」をたくさん覚えられるようにする》

 「幼児期の英会話教室」が流行っているという話を聞きます。実際、楽しく遊びながら、英語の正しい発音を身につけるのに、一定の効果を上げていると思います。そんな中、こどもを英会話教室に通わせる余裕のない親御さんの不安の声も聞きます。教える学校の先生方も、既に格差のある生徒を教えるのは、大変であろうと想像できます。しかし、本当にそうなのでしょうか。

 記憶というのは、かなり怪しいものです。私は、週に1回程度、英会話教室で英語を習ったところで、日常生活でそれを使わなければ、すぐに忘れてしまうと思います。英会話教室で身に着くのは、「簡単な英単語や発音くらい」と思います。覚えたと思ったものも、使わなければすぐに忘れてしまうからです。英検4級程度の文法力まで、身に着けましたと言っても、英検5級程度の文法をすっかり忘れているというのは、よくあることなのです。(ネットを使うなど、毎日英語に触れる機会を作っているような教育機関があれば別ですが…)
 記憶について

 そんなわけで、毎日生徒と接する機会のある先生方は、英会話教室や塾の先生と違って、影響力は絶大です。教え方一つで、生徒の英語力向上に、ものすごく寄与できるのです。是非是非、頑張っていただきたいです。

 小学生の1~2年では、むずかしめの単語や言い回し、英語を書くことを教えても、あまり効果がないと思います。この時期に教えるのに効果的と感じるのは、身近なものを英語で言えるようにすることです。食べ物・動物、数、曜日など、身近なものを英語にできるようになるといいですよね。一度教えたと思っても、生徒はすぐに忘れてしまいます。もし、一か月、新しく教えた単語に全く触れなかった後、生徒がどのくらい覚えているか、確認してください。ほとんど忘れているはずです。でも、しょっちゅう、その単語を使っていたら…知識ほ長期記憶装置に入ります。

 ALTの先生が居れば、先生の
「物まね」をさせるような感じで、何度も繰り返し、大きな声を出して発音をする練習させてみてください。英語の発音に大事なことは「物まね」の能力です。「勉強」が得意な人が、英語の発音が良いわけではありません。
「マクドナルド」「チキン」「アップル」は、誰でも意味がわかるのに、アクセントと発音が全く違い、英語らしい抑揚でないと通じません。日本語と全く違う英語の抑揚をまねるのは面白く、楽しみながら、単語を覚える絶好のチャンスです。
また、絶対学習するであろう、1~15までの数字の発音を正しく教えることも大切です。なぜならば、これらの数字に含まれる、L, F, V, N, THは、日本語にない発音だからです。
 L, F, V, N, TH…これが日本人の苦手な発音

 超大切!英語の数字の発音

 いろいろな単語を覚えたら、その単語を使ったゲーム(例えば、「サイモンさんが言いました」や「誰かがイメージした単語を当てるゲーム」)などして、遊びながら英語への興味と知識を増やせると思います。

 英語の歌も効果的です。ただし、どのような歌を選択するかで、違いが出てきます。いくらビートルズの曲が良いと思っても、この時期の英語力向上には、ほとんど役に立ちません。外国人がサザンオールスターズの歌を覚えても、日本語の上達に効果的とは思えないのと同様です。

 幼児
向けの楽しい歌やビデオ教材があるようです。明確で、わかりやすい英語で、リズミカルに学べるのが特徴です。途中途中にむずかしいフレーズが入っているものもありますが、教えた単語だけ、しっかり発音できるようにすれば、かなり効果的です。歌だと、繰り返し思い浮かべて歌えるので、繰り返し学習が最も必要な英語には、良いことずくめです。英単語は、本当にすぐに忘れるので…
 古い知識かもしれませんが、Oxford University Press のStudent Book (一部の幼児のための英会話教室で使われているようですが)では、
歌で「曜日」「数字」「アルファベット正しい発音(フォニックスに基づく)」などを覚えるようになっています。同時に、「文字(letter)」への興味も引き出す工夫がなされていて、とても良いと感じました。
この趣旨に合ったCDやビデオ教材、ネット教材をご存知でしたら、教えていただけると幸いです。こちらに載せさせていただければと思います。

 
以前、小学校へのALTの派遣も少なかった頃、青少年相談員をしていました。その時、有名な、「Head and Shoulders」や、フォニックスが学べる「Listen to the letters」という英語の歌を、発表会で歌うような企画を立てました。小学校の4年から6年生の有志を集め、何度も練習した結果、歌は、発音の向上や英語の楽しさを教えるのに効果的と感じました。昔、幼児に人気のテレビで「Head and Shoulders」が流行っていた頃、「Shoulders」が何か、多くの子供が知っていたと記憶していますが、今は残念ながら、いちいち教えないとわからない中学生もいます。簡単で身近な単語は、是非、歌の中で、教えてほしいと思います。



小学校3,4年

  英単語の正しい読み方を覚えながら英語を楽しむ時期


《ローマ字を学習する際、アルファベットの正しい発音(フォニックス)を教え、英語の綴りと発音の関係性を理解できるようにする》

 アルファベットの発音(フォニックス)を学べる英語の歌などは、正しい発音を学ぶきっかけとして、とても良いと思います。ただ、歌だけ楽しんでいるだけでは、生徒の学習意欲を十分引き出し、満たすことはできないでしょう。さらにこの時期になると、生徒の特性や性格などから、発音が上手な生徒と、そうでない生徒が、はっきり分かれてくるはずです。

 私は、このあたりで、理論的に、英語の発音方法を教えることが、生徒が効率的に英語の綴りを書けるようになるために、とても有効であると思います。綴りを書くことがとても苦手なために、英語嫌いになる中学生に多く出会いました。是非、一度、以下のページを見ていただきたいと思います。

 l,f,v,n,thこれらのアルファベットが発音できれば大丈夫!

 
小学校の4年生でローマ字を学習する時に、英語の正しい発音(フォニックス)に合わせて指導ができれば、日本人が、「カタカナ英語」などと、揶揄されることがなくなると私は思います。日本人にとって、特に苦手な発音のことは、外国人ではなく、ネイティブな日本人だからこそわかるものです。ネイティブな英語の話し手は、余程日本語に精通していないと、理論的に発音を教えることはむずかしいと思います。
 例えば、「し」は「siスィ」ではなく、おかしの「shiシ」。これなら、shiは、英語としても正しい発音になります。「ん」は「n」と書きますが、これはあくまで日本語で、英語の「n」は、実は「ンヌ」と読むと、あらかじめ教えておいてはどうでしょう。このように教える先生が少ないので、nの発音ができず、英語らしい発音にならない日本人は多いです。(偉そうに書いている私も、恥ずかしながら、そこに気づいたのは、23歳の時です。遅!)
 ただ、現在(2015年3月)、小学校では、ヘボン式ではなく、訓令式でローマ字を教えているところもあるようです。これが主流かは確認していませんし、いろいろな考えに基づくものと思いますが、「英語を話せるような教育」と言う観点からは、大問題と思います。是非、以下のページもご覧になってください。

 
「ローマ字も英語らしい発音で練習しよう!」

 基本的なアルファベットの発音方法がわかったら、英単語の「つづり(spelling)」「読み」「意味」を正しく「組み合わせる(maching)」技能を身につけさせる必要があります。「会話」優先で楽しく英語を学んできた生徒が突然英語嫌いになる要因も、その組み合わせがしっかりできないことが原因と思われます。

 特に、数字などは、つづりと読みに大きな隔たりがあるので、勉強のできる生徒でさえ、戸惑う人が居ます。トランプの神経衰弱をやるように、カードの表につづり、裏に意味、(例えば、表「one」、裏「1」など)を書いて、遊びながら覚えさせるのも、英語嫌いを招かない有効策の1つと思います。
余談:現在(2017.8)進学高校に通っている、勉強が得意な私の生徒の一人は、小学5年生の頃、英語の数字をしっかり覚えて発音もできていたのに、つづりを全く覚えられませんでした。これはまずいと、この方法を試したところ、やっとできるようになりました。勉強できるということと、綴りを覚えるのが得意なことは、あまり関係がないのだと、この時思いました。

 英単語のつづり・spellingの覚え方


 英語をたくさん書かせて覚えさせるのは、中学校に入ってから(あるいは、教科となる5年生から?)で、十分であると思います。その前に、単語を固まりとして覚え、
「英単語を見ただけで正しく発音ができ、意味がわかる」このような単語の数を増やしてあげることが、将来、英語嫌いな生徒を減らすことにつながると思います。書くことに時間をかけるかわりに、読める英単語の数が増えてくると、英語でできるゲームの幅も広がり、その後の学習もスムーズに行えると思います。スムーズに学習ができれば、繰り返し学習の頻度も上げられ、知識の定着もつながるのではないでしょうか。



小学校5年6年

  簡単な文法を覚え、英文の意味をしっかり理解する時期


《英文法の基本: 英文には必ず主語があり、動詞はbe動詞と一般動詞の2種類の区別があることをしっかり教える》

具体的に教える内容はこちら小学生にもわかる英文法

 小学校高学年(5年6年)で、文法を教えていくような話が出ていますが、私は大賛成です。小学校高学年と言えば、もう、ゲームや歌、また、行きあたりばったりな英会話より、しっかり理論立てて英語を教えた方が、理解を得やすい時期と思います。
《私の生徒(2013年中3で英検2級取得)が、港区立の小学6年生だった時に、ALTの授業を受けていて、なぜ、「Are you~?」と「Do you~?」の聞き方に違いがあるか説明されず、疑問ばかりが膨らんだと言っていました。もっと早く、文法を習っていたら、あれほど戸惑わなかったと話していました。》

この時期の英語指導で気を付けていただきたいこと

1.書かせるのではなく、声に出させることに重点を置く
2.英単語1つ1つの意味もしっかり教える
3.英語には、主語が必要と言うことを教える
4.動詞も必要だが、be動詞と一般動詞の2種類あることを教える
5.英語はすぐ忘れるのを前提に繰り返し学習ができるようにする

  そして、中学の英語学習につながる指導をする

1&2.普段、英語を使わない日本では、生徒は教えてもすぐに忘れてしまいます。また、アルファベットやローマ字を書けるようにすることは大事ですが、英単語のスペリングを書くのは、苦手な生徒は大変です。読めて意味の分かる英単語を増やせば、後々必ず役立ちます。中学・高校でも簡単な英単語の発音ができない生徒、意味がわからない生徒がいます。しかし、そんな生徒達も、読めて意味がわかる単語数が増えてくると、英語嫌いが少しづつ改善していきます。

 日常的に使えそうな簡単な「名詞」や「形容詞」をたくさん覚えることができれば、自分で英文を組み立てられ、会話ができるようになると思います。

 
1~100・数の一覧  曜日、季節、月の一覧 日付1 日付2
 色の一覧
   食べ物の一覧   職業の一覧   教科の一覧
 スポーツの一覧  (人の状態などを表す)形容詞の一覧

 名詞の単数形と複数形


3.自分で英文を組み立てて英会話をできるようにするには、まず、主語が必要ということをしっかり教えていただきたいです。日本語では、主語を省略することが多いですから…。「英語には主語が必要で、すべての主語は人称代名詞の主格で置き換える必要がある。」この概念が、日本語と英語の大きな違いであり、ここをしっかり理解できると、後々の英語理解にとても役立ちます。

 ただし、英語では単数・複数をしっかり使い分ける必要があります。あまり早い段階で、単数・複数をうるさく言ってしまうと、生徒のやる気を削ぐことになる気もします。3人称単数形のitだけでもかなり難しいのに、複数が出てくれば、theyも学ばなくては英文が成り立ちません。個人的には相当大変だと感じ、配慮が必要と思います。

 英語には必ず主語がある!
 
 主格の説明、「主語の認識が苦手」な生徒


4.その主語に対する動詞も絶対必要であり、動詞には、be動詞と一般動詞の2種類あるということも、早い段階で教えていただきたいと思います。この使い分けがしっかりできず、混乱している中学生をたくさん見てきました。小さい頃から英会話をやってきて、「英語は得意!」と言う生徒が、否定文になると、I'm not~なのか、I don't~なのか、よくわかっていない場面に、何度も遭遇しました。内容が簡単なうちに、このことを押さえておいていただけると、将来の英語理解に、大きくつながっていくと思います。

 動詞(be動詞と一般動詞)の説明について

 be動詞の現在形・肯定文・疑問文・否定文

 一般動詞の現在形・肯定文・疑問文・否定文

 3人称単数現在形・肯定文・疑問文・否定文


 小学校で一般動詞を教える際、人称代名詞によって動詞の形が変わるのはむずかしいので、助動詞のcanを使うように指導しているところがあるようですが(千葉県K市教育委員会の話)、「とんでもないこと」と思います。確かに、幼児の英会話教室では「I can. Ican.」を繰り返して、楽しく英語を学ぶ手法もありますが、「できるよ。できるよ。」って、あくまで幼児の会話です。
一般的な肯定文は、動詞の現在形を使うのが普通です。
 I can swim. はcanを教える時の典型的な文ですが、「柔道」ならどうでしょう。一般的には、I do Judo.(僕は柔道をやっています)になります。canを入れるならば、I can do Judo.ですが、多少違和感が残ります。中学生でも、この場合のdoが動詞とわからず、I can Judo.など、あり得ない英文を作る生徒も出てきます。
 
助動詞はむずかしい特別な文法なので、こちらのサイトでも中学1-2年ではなく中学2-3年の英文法に入れています。canは特別なのです。「肯定文では、主語の後にすぐ動詞」という規則をしっかり理解できている生徒には、助動詞を教える際も、苦労しないのです。

余談:私が塾で担当した生徒の中に、小学5年生から大学受験まで教えた生徒がいます。その生徒は、中学2年生の1学期で英検準2級を取得(2013年7月)しました。彼女は、私が教える2年前の1年間、英会話教室に通った経験があり、英語の発音はそこそこ上手でしたが、しゃべれるレベルではありませんでした。私は週に1度、小学5年の1年間はbe動詞だけ、6年になってから初めて一般動詞の現在形を教えました。綴りを書く練習はそれほどしませんでしたが、基本例文を何度も何度も音読するように授業を進めました。そんなスローペースでしたが、中学1年生の終わりには、中学で習う文法の8割は教えることができました。基礎中の基礎を、繰り返し時間をかけて教えることが出来れば、後々習う文法の習得がきわめて容易になることを痛感しました。
 
今(2020年4月)彼女は、国立の東京外語大学に通っています。英語力は、高校受験や大学受験に大きなメリットがあったと思います。英語で苦労する時間を他の勉強に費やせ、進路の選択肢も増えるからです。彼女も一時は医学部を目指していました。逆に、英語に苦労すると、せっかく理数系などの才能が高いのに、受験で失敗するケースも多いです。実は私もそんな苦い経験を持つ人間の1人です。(詳しくは「初めに」書いています。)


5.小さいころから英会話をやっていて、「小学校で英検4級(または3級)をとりました」と言って、塾に来た生徒が、中学生になって、どんどん英語ができなくなる姿を何度も見ました。英語が得意だからと塾に通わず、むずかしくなり始める中2から塾に来たら、基礎が全くわかっておらず、大変なことになっていたという生徒もいました。日常、英語を使う機会の少ない日本では、一度覚えたと思っていても、使わなければ忘れるのは当たり前のことなのです。海外に何年も勤務経験のある大人でも、帰国後殆ど英語を使わなければ、英会話力はどんどん落ちるのです。その辺が、日本では理解されていないことが多いと感じます。
 
普段の生活で英語を使わない日本では、新しい英文法を教えても、生徒は次から次に忘れてしまいます。私が、小中学生を塾で指導するにあたり、1番重視したのは、忘れないようにするために、繰り返し基本例文を音読練習できるために、重要な基本例文や単語を、1冊のノ―とにまとめさせることでした。これは、勉強が得意・不得意にかかわらず、すべての生徒の英語力を上げるのに役立ちました。是非1度、このノート(私自身はマイノートと呼んでいますが、文科省から出ているもの?とは違います)の作り方をご覧ください。

 マイノートを作ろう


まとめ:
 「英語にはふつう主語と動詞が必要で、動詞は2種類、be動詞と一般動詞がある」ことを、生徒にしっかり理解させてください。命令文は主語youを省略した特別な形ということもです。毎日、英語で会話練習ができればよいのですが、それはなかなかむずかしいと思います。生徒達が、自分たちで、繰り返し音読することで、英語が身につくのだと教えてあげてください。
 
普段英語を使わない日本では、習った英語をすぐ忘れてしまうことなど当たり前なのです。忘れてしまった生徒を叱らないでください。生徒が忘れてしまっていたら、「自分の指導法に問題があるのでは…」という視点を持ってください。生徒が繰り返し、英語に触れる気持ちになるように、ご指導いただきたいと思います。
 小学6年生を終える時点での子供たちの英語力がどのようになっているのかが大切です。英語は、一度指導すれば、自習で復習できる他の教科とは違います。3年4年5年6年の途中まで、楽しく英語を学んでいても、中学入学直前の時期に、前に学習したことを忘れていては、小学校の英語教育など、殆ど意味がないと思います。
 
中学の英語学習につながる英語指導をお願いします。




指導範囲を早めに終わってしまった時
  復習が大切。遊びの時間にしてしまうともったいない


 中学校でも、指導スピードが遅い先生がいます。塾講師をしていても不安になることが多い中、いきなりスピードを上げて授業し、生徒を混乱させ、結局、英語嫌いを増やしているという場面も多く見てきました。
学習指導要領の範囲を早めに終わらせることができるというのは、概して良いことであると思います。

 何度も書いてきましたが、日常生活で英語を殆ど使わない日本で、「英語を忘れないようにする」というのは至難の業です。英語を身に着けるのは、「繰り返し学習しかない」というのが、小学生から大学生まで教えた経験のある私の考えです。そのために、
空いた時間を「復習に充てる」というのは、とても重要なことと思います。逆に、復習に充てる時間を作るために、早めに指導範囲を終えていただきたいくらいです。

 小学校5年生でしたら、「2017年12月現在、文科省から配布されている、「Hi, friends 1 」に収められているチャンツ(Lesson1 Hello! Lesson3 How many balls?など)を電子教材を使って、何度もやるのも有効」という話を聞きました。
英語を本当に話せるようにしたいなら、多くの一般動詞や形容詞を覚えることが有効と思います。動詞や形容詞の活用を、チャンツとして、何度も繰り返し、声出し練習するのは、とても実用的な学習と思います。

 参考:動詞の活用・形容詞の活用「いつ覚えるの?」

 中学の先生方でも、時間が余ると、生徒が喜ぶからなのか、ビンゴゲームや歌などに多くの時間を充て、復習など全くしない方がいました。正直驚きです。「英語を話せるようにしてあげたい」と、生徒のことを本気で考えてくださるならば、生徒が少しでも英語を話せるようになるよう、是非是非、今まで学習してきたことを振り返りながら、英語を聞いたり、発音したりする機会を設けてください。
繰り返し練習しなければ、英語の知識は定着しません。生徒が楽しみながら復習できるよう、工夫いただきたいです。