「効率的な成果をあげられる小学校の英語教育」
とはどのようなものでしょう?


「英語教育をいつから始めるべきか?」


 以前は、有識者と呼ばれる方々から、「英語学習より、国語学習の方が大事であり、子供たちに早くから英語を教える必要はない。英語学習は中学からで十分。」が多かったと思いますが、教育行政の方針転換で、2020年頃から、小学校でも、英語を教科として学習することになりました。勉強の得意な生徒や、英語のセンスのある生徒でない場合、英語の習得には時間がかかり過ぎると感じてきた私としては、良い方向と思います。しかし、導入方法に関しては、多くの心配な点があります。

「英会話スクールのような英会話と教科としての英語の違い」

 小学生の頃から「英会話をずっとやっていて、英検4級も取りました!」というような生徒が、中学2年生頃、学校の英語が全くわからなくなる様子を数多く見てきました。どうしてこのようなことが起こるのでしょう。

 一般的な英会話教室では、「日本語と英語の文法の違いを、あまり教えない」ということが原因であると、私は思います。何となく、英会話をしていると、何となくできるような気がする。しかし、「何となく」はあくまで「何となく」なのです。なかなか、しっかり自分で英語を話していく力は付きません。
「しっかり自分で英語を話していくために必要なもの」…それが英文法なのです。

 私の生徒の中に、中学1年で英検3級、中学2年の7月に英検準2級を取得した生徒がいました。彼女は帰国子女というわけではなく、小学校5年生から英語を勉強し始めました。週に1度90分、小学5年生でbe動詞の現在形だけ、小学6年生で一般動詞の現在形だけを勉強しました。一般的な英会話スクールより、ずっと進み方が遅いと思います。しかし、これらの文法をしっかり学習した結果、中学2~3年の文法の学習をスムーズに進められ、このような成果を上げられたと思います。

 それでは、英会話スクールは無駄でしょうか。もちろん、そんなことはありません。
  1. 正しい発音が身につく
  2. 恥ずかしがらずに、英語を言えるようになる
  3. 楽しみながらたくさんの単語を覚えられる
      
いろいろな良い点があります。そして、毎日英会話スクールに通っていたら、どんどん英語が話せるようになるでしょう。しかし、そうするには、莫大なお金がかかります。普段英語を使う機会が少ない日本で英語を勉強するのは、外国で勉強するのとは、全く環境が違います。ただ、漠然と学ぶのではなく、効率的に学ぶ必要があります。そして、そこで役立つものが、英文法なのです。


 以上のような経験を踏まえ、ここでは、早期の英語教育を、小学校1,2年、小学校3,4年、小学校5,6年の3段階に分けて、私の考える効率的な英語教育について、書いていきたいと思います。英語の導入時期が小学校高学年の場合は、1,2年の所に書いた学習を手短かに行い、進めていくと、有効と思います。現在(2014年4月)の小学校で特に問題であると思われる点は、後半にまとめております。
 なお、ここで書く指導法は、ごく一般的な生徒を対象に考えました。特にできる生徒や、英語を使える環境にある生徒などについての最適な指導法ではありません。




1)効率的に成果があげられると思われる、学習時期と内容


①小学校1,2年 (幼稚園児なども含む)
  正しい英語の発音に触れ、単純に英語を楽しむ時期

 
《ゲームや歌などを通して、楽しく英語に親しみ、日常的に使う単語の「発音と意味」をたくさん覚えられるようにすると良い》

 「幼児期の英会話教室」が流行っているという話を聞きます。実際、楽しく遊びながら、英語の正しい発音を身につけるのに一定の効果を上げていると思います。格差社会突入の引き金のようにも見えますが、多くの場合、「身に着くのは、簡単な単語の意味と発音」だけです。なぜなら、日本では、一般的にそれを使って日常的に会話をする習慣がなく、週1回程度英会話もどきをやったところで、英語を自由に使えるようになるのは困難だからです。小学生の1〰2年になっても同様で、英語は繰り返しやらなければすぐ忘れてしまうものなので、難しめの単語や言い回しを教えても、ほとんど効果がないと思います。

 ただ、この時期に教えるのに効果的と感じるのは、身近な食べ物や動物など、先生の「物まね」をさせながら、何度も何度も発音を繰り返して覚えられるようにする事です。「物まね」が得意なのと、「勉強」が得意なことは別次元ですが、
英語の発音に大事なことは「物まね」の能力です。ここがとても面白いと思います。「マクドナルド」「チキン」「オレンジ」「アップル」は、誰でも意味がわかるのに、発音が全く違う。しかも、日本語にはない、「l」や「n」の発音が入っている上、英語らしい抑揚でないと通じない単語です。小さい子供のうちは、この抑揚を楽しみながら、単語を覚える絶好のチャンスです。いろいろな単語を覚えたら、その単語を使ったゲーム(例えば、「サイモンさんが言いました」や「誰かがイメージした単語を当てるゲーム」)などして、遊びながら英語への興味と知識を増やせると思います。

 英語の歌も効果的です。ただし、どのような歌を選択するかで、違いが出てきます。いくらビートルズの曲が良いと思っても、この時期の英語力向上には役に立ちません。外国人がサザンオールスターズの歌を覚えても、日本語の上達に効果的に役立つとは思えないのと同様です。

 
Oxford University Press のStudent Book (一部の幼児のための英会話教室で使われているようですが)では、歌で「曜日」「数字」「アルファベット正しい発音(フォニックスに基づく)」などを覚えるようになっています。同時に、「文字(letter)」への興味も引き出す工夫がなされていて、とても良いと感じました。

 
以前、まだ小学校へのALTの派遣も少なかった頃、青少年相談員をしていました。その時、有名な、「Head and Shoulders」や、フォニックスが学べる「Listen to the letters」という歌を、発表会で歌うような行事をし、小学校の4年から6年生の希望の生徒たちに教えた経験があります。歌は、発音の向上や英語の楽しさを教えるのに、効果的と感じました。幼児に人気のテレビで「Head and Shoulders」が流行っていた時、「Shoulders」が何か、多くの子供が知っていたと記憶していますが、今は残念ながら、いちいち教えないとわからない中学生もいます。



②小学校3,4年

  英単語の正しい読み方を覚えながら英語を楽しむ時期

《ローマ字を学習する際、アルファベットの正しい発音(フォニックス)を教え、英語の綴りと発音の関係性を理解できるようにすると良い》

 アルファベットの発音(フォニックス)を学べる英語の歌などは、正しい発音を学ぶきっかけとして、とても良いと思います。ただ、歌だけ楽しんでいるだけでは、生徒の学習意欲を十分引き出し、満たすことはできないと思います。さらにこの時期になると、生徒の特性や性格などから、発音が上手な生徒と、下手な生徒が、はっきり分かれてくるはずです。

 私は、このあたりで、理論的に、英語の発音方法を教えることが、生徒が効率的に英語の綴りを書けるようになるために、とても有効であると思います。綴りを書くことがとても苦手なために、英語嫌いになる中学生に多く出会い、感じました。発音に関しては、以下を参考にしてください。

 l,f,v,n,thこれらのアルファベットが発音できれば大丈夫!

 
小学校の4年生でローマ字を学習する時に、英語の正しい発音(フォニックス)に合わせて指導ができれば、「カタカナ英語」などと揶揄されることがなくなると思います。日本人にとって、特に苦手な発音のことは、ネイティブな日本人だからこそわかるものです。ネイティブな英語の話し手は、余程日本語に精通していないと、理論的には教えられません。
例えば、「し」は「si」ではなく「shi」なら、英語としても正しい発音になります。「ん」は「n」と書きますが、これはあくまで日本語で、英語の「n」は、実は「ンヌ」と読むと、あらかじめ教えておいてはどうでしょう。
 ただ、現在(2015年3月)、小学校では、ヘボン式ではなく、訓令式でローマ字を教えているところもあるようです。これが主流かは確認していませんし、いろいろな考えに基づくものと思いますが、「英語を話せるような教育」と言う観点からは、大問題です。是非、以下のページもご覧になってください。

 
「ローマ字も英語らしい発音で練習しよう!」

 基本的なアルファベットの発音方法がわかったら、英単語の「綴り(spelling)」「読み」「意味」を正しく「組み合わせる(maching)」技能を身につけさせる必要があります。「会話」優先で楽しく英語を学んできた生徒が突然英語嫌いになる要因も、その組み合わせの技能不足が原因と思われます。

 特に、数字などは、綴りと読みに大きな隔たりがあるので、理解力のある生徒でさえ、覚える事が大変です。トランプの神経衰弱をやるように、カードの表に綴り、裏に意味、(例えば、表「one」、裏「1」など)を書いて、遊びながら覚えさせるのも、英語嫌いを招かない有効策の1つと思います。

 英語をたくさん書かせて覚えさせるのは、中学校に入ってからで十分であると思います。その前に、単語を固まりとして覚え、英単語を見ただけで正しく発音ができ、意味がわかることが大事です。英単語が読めるようになってくると、英語でできるゲームの幅も広がりますし、その後の学習も、とてもスムーズに行えるようになります。



③小学校5年6年

  簡単な文法を覚え、英文の意味をしっかり理解する時期


《英文法の基本: 英文には必ず主語があり、動詞はbe動詞と一般動詞の2種類の区別があることをしっかり教えると良い》

具体的に教える内容はこちら小学生にもわかる英文法

 小学校高学年(5年6年)で、文法を教えていくような話が出ていますが、私は大賛成です。小学校高学年と言えば、もう、ゲームや歌、また、行きあたりばったりな英会話より、しっかり理論立てて英語を教えた方が、理解を得やすい時期と思います。注意深い生徒なら、何故、相手に尋ねるとき、「Are you~?」と「Do you~?」の聞き方があるのか、疑問を持ちます。生徒の疑問を解消してあげないと、やる気を削ぐ結果も招くかもしれません。
《実際、中学校3年の11月に英検2級(2013年)を取得した生徒が、小学校(港区立)の時のALTの授業の体験談として、このエピソードを教えてくれました。》


 
この時期の英語指導で気を付けていただきたいのは、「書かせる授業ではなく、話させる授業の実践」です。文法については、まず、「主語」、「be動詞の現在形」について教えることになると思います。その時、日常的に使えそうな、簡単な「名詞」「形容詞」も教えてあげると、自分で英文を組み立てられ、自分で考えた会話ができるようになると思います。
 以下を参考にしてみてください。


 
英語には必ず主語がある!

 
Be動詞の現在形・肯定文・疑問文・否定文

 
会話重視ですと、一般動詞の学習を早く進めがちですが、be動詞を理解することは、日本人には大変難しいことです。小さい頃から英会話をやってきて、「英語できる!」と言う生徒でも、否定文がI'm not~なのか、I don't~なのか、よくわかっていないのを目にします。初めのうちは、生徒の様子を見ながらになると思いますが、1年くらいは徹底して、be動詞だけで授業を進めても、それなりの授業にるはずです。(be動詞の難しさについては、以下をご覧ください。)

 
動詞(Be動詞と一般動詞)の説明について

 「一般動詞の現在形」は、せめて、6年生になってからで、十分と思います。(一般動詞の現在形については、以下参考)


 
一般動詞の現在形・肯定文・疑問文・否定文

 3人称単数現在形・肯定文・疑問文・否定文
 
 私が塾で担当した生徒の中に、小学5年生から教えている生徒がいます(2017年4月現在高校3年生)。その生徒は、中学2年生の1学期で英検準2級を取得(2013年7月)しました。彼女は、小学校3年時に、1年ほど英会話教室に通った経験がありましたが、私は週に1度、小学5年の1年間はbe動詞だけ、6年になってから一般動詞の現在形を教え始めました。綴りを書く練習はそれほどしませんでしたが、基本例文を何度も何度も音読するように授業を進めました。そんなスローペースでしたが、中学1年生の終わりには、中学で習う文法の8割がたは教えることができました。基礎中の基礎を時間をかけて教えることが出来ていれば、後々習う文法の習得がきわめて容易になることを痛感しました。

 
普段の生活で英語を使わない日本では、新しい英文法を教えても、生徒は次から次に忘れてしまいます。私が、小中学生を塾で指導するにあたり、1番重視したのは、忘れないようにするために、繰り返し基本例文を音読練習できるために、重要な基本例文や単語を、1冊のノ―とにまとめさせることでした。これは、勉強が得意・不得意にかかわらず、すべての生徒の英語力を上げるのに役立ちました。是非1度、このノート(私自身はマイノートと呼んでいますが、文科省から出ているものとは違います)の作り方をご覧ください。

 マイノートを作ろう



 英文には「必ず主語がある」こと、「動詞にはbe動詞と一般動詞の2種類ある」ことを、生徒にしっかり理解させてください。そして、何度も何度も音読することが、英会話の上達には、絶対必要であることを教えてあげてください。
 普段英語を使わない日本では、習った英語をすぐ忘れてしまうことなど、当たり前なのです。生徒が繰り返し、英語に触れる気持ちになるように、ご指導いただきたいと思います。





                    


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