2 小学校の英語教育について  戻る

2)小学校の英語教育で問題になると思われる事柄と解決策
   《2021年10月3日改訂
☆ページ内リンク☆
 英語に「自信がある・ない」とは?/英語指導で必要なことは?

 
問題点1: 小学校での英語指導に関する、指導方法が曖昧
  …英語教育に関するしっかりしたマニュアル作成が必要
  …参考になりそうな小学校の外国語活動例のサイトへのリンク

  …小学校の新外国語教材、We Canについて (2018.7現在)

 問題点2: 自信を持って英語指導できる先生の不足
  …英語指導のできる先生の養成と教育補佐の確保
  ①英語の発音や文法の基礎を学び直す

  ②英語の堪能な地域ボランティアに協力してもらう
  ③ALTなどネイティブの英語指導助手について
  ④英語のアシスタント教員…資格、報酬、待遇は?2018年

  ⑤2021年10月・英語のアシスタント教員の現状

 *文部科学省/新教材説明会の資料(5・6年生用/2017.10)

英語に「自信がある・ない」とは?英語指導に必要なことは?
(2018年現在)

 小学校の教員の方々の中には、もともと、英語に自信がなくて、小学校の教員になられた方もいらっしゃると伺いました。それなのに、「今更何故!?」と思われる先生方も多いのではないでしょうか。お忙しい中、本当に大変なことと思います。

 ただ、「英語に自信がある」という日本人は、いったいどれくらいいるのでしょう。海外に1~2年留学したり、赴任経験がある人は、「英語がぺらぺら」と思っている人も多いと思いますが、それは大きな誤解です。帰国後すぐであればともかく、日本に帰ってきてほとんど英語を使わなければ、英語はどんどん忘れていきます。また、「英語がぺらぺら」っぽくしていても、自分の言いたいことだけしゃべって、相手の質問などに的確に答えられない人も見受けられます。しかし、本人は「英語が堪能」と勘違いしている場合もあります。
「英語に自信がある」とは、一般的な日本人には、なかなか言えない言葉ではないでしょうか。

 私は、
第2外国語として英語を学ぶ日本人に必要な英語力は、「相手とコミュニケーションが取れる」で十分と思うのです。通訳のような英語力の習得はその先の問題です。私のサイトで最も強調している「中学1~2年程度の英文法がわかれば英語は喋れる」という意識を、先生方が持ち、生徒さんに伝えてくださることが、重要ではないかと思います。

 もし、今、全く英語が話せないという方がいましたら、それはただ、忘れているだけと思います。生徒を指導する中で、思い出していただければ大丈夫です。こちらのサイトで紹介している簡単な文法と用語で、それなりの英会話は必ずできます。むずかしい文法や用語を使う必要はないのです。

 
英語ネイティブの方は、なぜ日本人が英語が苦手か、理解されていないというのが、長年英語教育にかかわってきた私の印象です。l, f, v, n, thは日本人が苦手な発音ですが、英語ネイティブな方は、それを踏まえた発音指導は、あまりしてくれません。英語で文章を作っていく時、すべての主語は、必ず人称代名詞の主格に替える必要があるということも、よほど日本語と英語の違いに精通した人でないと、説明してくれません。
幼児ではなく、小学生以上の生徒に英語を教えるには、
論理的に説明してあげたほうがわかりやすいというのが、色々な年齢の子供を教えてきた私の印象です。
日本人だからこそ、できることも多い。
英語が苦手な先生方には、そのことを忘れず、自信を持って生徒をご指導いただきたいです。

 私は、通訳ボランティアなどをしている時に、何度か小学校の英語の授業を見学させていただいたことがありました。日本人の担任と英語がネイティブなALTが組んだ授業を見て感じたのは、
「生徒に英語のやる気を起こさせるのは、日本人の担任の先生の英語力ではなく、生徒達と一緒に、英語を学んでいこうとする、前向きなやる気なんだ。」ということです。

余談:私が感銘を受けた、小学校6年生の英語の授業;
 日本人の担任の先生が、生徒たちに向かって、
「先生は、全然英語できないからね。メアリー(仮名)の言うのをよ~~く聞いて、マネして言ってみようね~」
「たけし(仮名)君すごいじゃない!!先生びっくりしたよ~」
 その授業は、ずっと、こんな感じで進行していきました。実はこの時のALTのメアリー(仮名)は、まだ不慣れで、生徒達の興味をしっかりひきつけるには力不足に見えました。日本人の担任の先生は、英語の発音こそ苦手そうでしたが、ALTをサポートする力は素晴らしく、生徒達は目を輝かせ、先生に良い所を見せようと、我先にと英語を話そうとしているように見えました。
 もし、ALTに実力があれば、担任の先生のこのようなフォローは必要ないかもしれませんし、担任の先生が英語が堪能なら、それに越したことはないのかもしれません。しかし、普段生徒を見ている担任の先生の力は、とても大きいと感じました。概ね若くて経験の浅いALTが入る時、この時の先生のような対応が有効であると思います。


 英語ネイティブのALTと組んだ授業では、担任の先生に必要なことは、英語力よりも、生徒にやる気を起こさせる指導力の方が大きいと思います。



小学校の英語教育における、問題と解決策(すでに実施されている自治体もあるようですが)をまとめてみました。良い問題解決方法は、どんどん広まり、より良い方向に教育が進むことを願ってやみません。


問題点1:小学校での英語指導に関する指導方法が曖昧
      ↓
解決策:英語授業に関するしっかりしたマニュアル作成


 英語指導と言っても、
小中学校で教えるべき範囲はかなり限られています。そして、その指導内容は、地域や時代を超えて、かなりの部分で不変のはずです。(覚えるべき用語数の変動など小さなことです。)生徒指導方法が毎年改善されて行けば、日本の中学生の多くは、英語を話せるようになっていたはずなのに、そうはならなかった。何故でしょう。私は、良い指導方法が、継承されてこなかったことが原因であると考えています。

 先生方は多忙です。にもかかわらず、指導方法が先生方個人個人に委ねられていることに、大きな違和感を覚えます。一般企業ならば、良い技術は、良い技術者から学ぶでしょう。技術力がない新人がいれば、先輩社員がそれをカバーしなければ、企業は回りません。しかし、そのようなやり方が、学校では殆ど見られないと感じるのは、私だけでしょうか。

 先生方は多忙です。公立中学の教科書は4年間、同じものが使われます。
各学年、各学期の授業内容など、良い指導の仕方を先生方の中で共有されていれば、授業計画の作成なども、かなり楽になると思います。使うべきプリントなど、それが良いものであれば、地域ごとで共有し、毎年使いまわしても全く問題ないように思いますが、なかなかそうならないようです。大変非効率と感じます。

  私は、ECCジュニアの幼稚園で教える英語講師に登録していた時がありますが、その
講師採用直前の研修では、50分授業のマニュアルをあらかじめ渡され、ゲームや紙芝居の読み聞かせなど、すべて英語で行えるように、まる暗記しなければなりませんでした。しかし、内容は、50分授業とは思えないほど充実したもので、覚えるのは面倒でしたが、とてもためになりました。一度すべてを覚えてしまえば、児童に使う英語はかなり限られているので、あとは、使う場面に応じて少しアレンジすれば、とても簡単であるということにも気づきました。授業の進め方に関する良いマニュアルを一度作ってしまえば、生徒が楽しく理解できる授業を計画することが楽になり、生徒達にとっても先生方にとっても良いことと思います。良いマニュアルを作り、共有することが大事であると思います。

 なお、文部科学省のサイトで、参考になりそうな授業の紹介が出ていましたが、どこをどう参考にしたら良いのか、分かりにくい気がします。誰かが正当に評価し、先生方が参考にし易い検索サイトのようなものができたら、先生方の負担が少なく、より良い授業を提供できるサポートになるかと思います。それは、システムさえ整えれば、そんなにむずかしい事ではないと思うのですが…。

 以下、私が役立ちそうだと思ったサイトです。しかも、たまたま行きつけたサイトです。神奈川県のALTが作った、小学生のための英語ゲームの説明などで、ネイティブらしい英語表現と日本語訳も載っています。小学生にはむずかし過ぎると思われものもありましたが…

 
ITが目覚ましく発展した今日、英語教育に役立ちそうなサイトを、簡単に見つけられるシステムを作り、広く紹介していただくと、先生方の大きなサポートになるかと思います。文科省、あるいは各教育委員会は、情報を先生方にただ横流しにするのではなく、役立つサイトを取捨選択して、まとめるくらいの気持ちを持ってほしいものです。

お願い:良いサイトなどがありましたら、掲示板やメールなどでお知らせください。


《参考になりそうな小学校の外国語活動紹介サイトへのリンク》

文部科学省「小学校外国語活動サイト」
→「情報コーナー」→「各教育委員会等ホーム―ページ」

神奈川県立総合教育センター/小学校外国語活動のページ

平成19年度研究成果物小学校英語活動15 -子どもたちの積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成するために-


文部科学省 小学校外国語教材We Can!デジタル教材の紹介(YouTube)
音声教材の使い方の説明
動画を見て感じたことは、リスニングが「むずかし過ぎる」という印象。何となくは、わかるようになると思いますが、しっかり理解するのは至難の業と感じました。例えば、

We can*Unit1/ Let's Listen(5年生)
…I like hambuger steaks. They are yummy. Do you like hamburger steaks?と出てきます。一般動詞のlike。be動詞のareが一緒に出てきて、混乱する。複数形のsteaksが出てきて人称代名詞のtheyで受ける。ここまでむずかしくする必要があるのか疑問でした。
「動物の絵、英単語、英単語の読み」を組み合わせて学べるような機能があって、それは便利と思いました。


文科省・Small Talk (スモール・トーク)
…小学校5年生Unit1~6年生Unit9まで出ているYouTube教材です。
初めから、バカみたいにむずかしいです。中学1年の後半レベルに合うような教材と感じます。


新学習指導要領を具現化した新教材の解説:校内研修シリーズ №34
校内研修の資料となる動画/教材の使い方の説明動画。
参考には、なると思います。しかし、やはり教材が文法的にむずかし過ぎるので…
英会話教室などでは、「フォニックス」を教えることが一般的と思いますが、この
「フォニックス」を知らない小学校の先生方が多いと聞きました。実は、学習指導要領に、「文字と音の関係」を指導するように書いてあるようで、まさにこの「文字と音の関係」がフォニックスです。そして、We Canの教材にも、アルファベットのフォニックスについて述べている箇所があることが、動画を見ていてわかりました。(フォニックスという名称は使っていませんが…)
〈読むことに関する練習〔Jingle〕…文字の読み方には、名称と音があることに気付き、それらに慣れ親しむ。
読むことに関する練習〔Sounds and Letter〕…(a~z)文字の音と、その音で始まったり終わったりする単語に慣れ親しむ。〉
ここでは、発音の詳しい説明はありませんでした。

 参考:アルファベットのフォニックス




《小学校の新教材We Can!について》(2018.7現在)

 
小学生向け教材として、ざっと見ると、楽しく学習できそうな、良い教材に見えます。実際、生徒が本当にこの教材をすべて理解でき、知識も維持できれば、早いうちに英語を話せるようになるのも夢ではないでしょう。しかし、文法的に見ると、初心者が学ぶには、あり得ないむずかしさと思いました。文法の説明は必要ないという前提で作られているように見えますが、文法を正しく教えておかないと、結局、以前と同じように、小学校英語の学習は「お遊びの延長」で終わり、中学での英語学習にうまく結びついていかないのでは…という印象を受けました。小学生も高学年になれば知的レベルはかなり高いと思います。「幼児向けの英会話教室で使われているような教材の延長ではなく、中学英語と齟齬が生じないように、文法の説明も入れ、もう少し初歩的な英語に焦点を絞った教材にした方が良いのでは?」というのが私の見解です。

 詳しく、目についた問題点を書くと、5年生の早い時期に、be動詞、一般動詞が混ざった文が出てきます。今、中学生でさえ混乱している生徒が多い地域もあるのに、大変と思いました。また、複数形の説明が十分でないと思われる段階で、人称代名詞のtheyが、電子教材には出てきます。
 6年生では、不規則活用動詞の過去形、wentやateがいきなり出てきます。不規則活用は「特別」と把握できなければ、生徒は、過去形を作る法則が学べません。つまり、応用が利かなくなってしまうと思います。また、よく使う文だからと、I want to do.という、不定詞の名詞的用法まで出てきます(5年生も?)。私が中学生を教えていた経験から言えば、be動詞と一般動詞の文法の違いがきちんと把握でき、肯定文・否定文・疑問文が作れる生徒は、不定詞が出てきても混乱しませんが、それができていない生徒は大変なことになっていました。
 こんなに複雑な文法を、小学生の段階で学ばせる意味がわかりません。文科省は、できる生徒だけを伸ばすエリート教育を推奨するために、この教材を作ったのではないかと疑いたくなるレベルです。
公立小学校の一般的な生徒の英語力を伸ばすには、この教材を使って教えるのは至難の業と感じました。小学校の先生方が皆、英会話が堪能で、英語指導力も格段に高い場合は別ですが…

 現状では、学習指導要領に書かれた通りに、この教材で授業を進めては、落ちこぼれてしまう生徒が出てきてしまうと思います。生徒の理解度に応じて、省略しながら教えて行くことも、場合によっては必要ではないでしょうか。

指導要領は、マストではないはず(←文科省のページ)


「『学習指導要領はマストではない』という根拠を教えてください。」

 私のサイトを読んでいただいた方から、このような質問をいただきました。正直、しっかり読んでくださる方がいることがわかり嬉しかったです。

 上記の文科省のページの中に、『各学校では、この「学習指導要領」や年間の標準授業時数等を踏まえ、地域や学校の実態に応じて、教育課程(カリキュラム)を編成しています。』となっています。「実態に応じて」とあります。私は、教員ではないので、「学習指導要領」を全部読んだわけではありません。また、どのくらい忠実に、先生方がそれに沿った指導をされているかもわかりません。しかし、
教育など、「実態に応じて」行わなければ、うまくいくわけはありません。「要領」はあくまで指針のはずです。ちろん、余裕のある生徒が不利を被らないように、省略した場合は、自習できるプリントなどの配布で補う必要などはあると思いますが…。そこで、少し強い表現の「マストではない」と書かせていただきました。

 今後の英語は、小学校の英語教育が始まったことで、地域差が今まで考えられないほど、大きくなると想像できます。私は塾の講師として中高生を教えてきましたが、すでに地域差を感じていました。私の地域では、中学2年に上がる直前の生徒達が、be動詞と一般動詞の使い分けも十分できないのに、学習指導要領の範囲を終わらせるために大急ぎで現在進行形を教える先生を散見しました。当然、生徒達は大混乱です。
 小学校の英語指導のスペシャリストを多く抱える自治体とそうでない自治体が出てきています。この先の事を考えると、例えば小学校の教材「we can」内の英語について、英文法の知識も踏まえて、しっかり学んだ子供たちは、中学2年生からの範囲の授業にも対応できるはずですが、教科としての英語の指導を十分受けられず、「英語を楽しむ」レベルで小学校を終えた子供たちは、結局中1レベルの最初の一歩からやり直さなければならなくなることが容易に想像できます。こうなってしまったら、中学の先生も、既に理解している項目が違う生徒に、どうやって授業をしていけばよいのでしょう。効果的な授業ができるでしょうか。

 「指針」は大事です。しかし、色々な要因で授業が順調に進まないことなど、起こり得ることです。英語が苦手になってから塾に来る多くの生徒を見てきて、現場の先生方に希望することは、生徒の様子を見て、臨機応変に対応頂きたいということです。教えるべき範囲の授業時間が足りないのに、無理やり詰め込むことはやめてください。生徒の理解を妨げるだけです。どうしてもノルマをこなさないといけないならば、その部分は授業ではなく、プリント配布などで代用しても良いではないですか。大切なのは、生徒が混乱するような授業はしないことです。何が生徒のために大切か、今一度考えていただきたいです。生徒の英語の勉強は、中学、高校、場合によっては大学、さらに社会人になっても続いて行くのですから…

教科書がむずかし過ぎると感じる具体例

We can! 1 (5年生)
Unit2のStory Time
I want to speak English more. We are good friends.
…不定詞の名詞的用法(中2の2学期)、we/friends複数が出てきます。「どうしてこうなるんですか?」と生徒に聞かれたら、どう答えますか?説明にものすごく時間がかかると思いますが、説明しなければ納得できなく、英語嫌いな生徒も出てくると思います。こんなむずかしい文法のが、この時期に必要でしょうか。リスニングもリーディングも、習った文法で対応できる教材にするべきと思います。応用は中学に入ってからで十分では?

We can! 2 (6年生)
Unit5に、I went to the sea. It was fun.
     I ate pizaa. It was delicious.
…一般動詞の過去形の、しかも不規則活用動詞が出てきています。また、be動詞の過去形wasまで、同時に出てきてわかりにくいです。中学生にとってもむずかしいところです。
 さらに、主語をitで受けるか、theyで受けるかも、小学生に説明するのはかなり時間をかけないとむずかしいのではないでしょうか。授業中にわかった気になっても、何となく覚えたものは、何となく忘れ、自分で自由に英文を作っていく時に苦労することが想像できます。
 
英語を話すことにつながる英作文



問題点2自信を持って英語指導できる先生の不足
      ↓
解決策:英語指導のできる先生の養成と教育補佐の確保


英語の発音や文法の基礎を学び直す

 前にも書きましたが、小学校の先生方に求められるのは、「英語力」だけがすべてではないと思います。日本人に苦手な発音などは、外国人より日本人の方が、分かり易く論理的に教えられると思います。そうは言ってもある程度の英語力は必要かと思います。

 当サイトの以下のページをご覧いただければ、
中学1~2年生レベルの英語を思い出せると思います。「日本人が英語を話せないのは、英語の勉強に仕方に問題があったから」という視点も入れて書いています。お忙しいでしょうが、参考にしていただけると幸いです。

  1章)日本人が英語を話すために絶対覚えておきたい4箇条!
    発音が苦手な方は→L, F, V, N, th…これが日本人の苦手な発音!

  2章)中学1年~2年の英文法・日常会話はこれが基本!

  3章)中学2年~3年の英文法・ここまでわかれば海外旅行OK!

  8章)小学生にもわかる英文法   


英語の堪能な地域ボランティアに協力してもらう

 英語が好きだったり、得意だったりする人は居るものです。公募で、退職者や専業主婦など、英語が堪能で空き時間があるボランティアを募ったり、地域の国際交流協会のような団体を通して、人材を探すのも良いと思います。
 ただ、ボランティアの中には、学校サイドから見ると、手続きや人間関係で「使いにくい」と思われるようなところもあるかもしれません。しかし、最初に、協力してもらいたいところがどの部分かを確認し、学校の指導方針をしっかり伝えておけば、それなりにトラブルも避けられると思います。この場合、報酬についても、「無償ボランティアか有償ボランティアか」など、あらかじめ、地域の実情に照らし、決めておく必要もあるでしょう。

 お金のある自治体ならば、民間の英語教育のノウハウを持つ会社に依頼するのも良いかもしれません。発音の基礎(フォニックス)と、基礎の基礎の文法を、生徒が楽しい雰囲気の中で理解できる業者を選定する必要があると思います。

 私は、ECCジュニアの幼稚園で教える英語講師に登録していた時がありますが、その時の研修制度は、とてもしっかりたものでした。児童にしっかり声が届かなくては意味がないので、腹式呼吸まで学ばされました。
いくら知識や能力があっても、それを児童に伝えられなくては意味がない。きわめて当たり前のことですが、こういう視点が大事なのだと、改めて思いました。


ALTなどネイティブの英語指導助手について

 今まで私は、多くの英語ネイティブの英会話教師やALTなどと、親しく接してきました。若い頃は、色々な英会話教室にも通いました。そしてわかったことは、
日本に来ているネイティブの英語教師の知識や指導力は、人によって大きく違うということです。色々な国の事情を知り、観光スポットから経済・政治情勢まで、色々な話の出来る人。ケンブリッジ大学などの外国人向け授業のように、外国人にわかりにくい英文法や英単語の派生語などを、しっかり指導できる人。年少の子供がワクワクしながら英語を理解できるような、英語指導のスキルがある人。魅力的な指導者ももちろんいますが、そのような指導ができる人の数は限られています。生徒が先生を選べるような学校では、人気の先生の授業はすぐにいっぱいになり、成績優秀でないと授業が取れないようなこともありました。何年もネイティブに英会話を教わっても、たいして成果が上がらないというのは、指導者にも問題があると実感しました。

 
英語がネイティブの外国人ALTだから、だれでも英語を上手に教えられるわけではないということを、頭に入れておいていただきたいです。このサイトでも書いてきましたが、「日本人だからこそ理解がむずかしい英語の発音や英文法」というものがあるのです。ALTにも、その辺を理解してもらいながら英語の授業計画が立てられると、より効果的な授業ができるようになると思います。


英語のアシスタント教員について(2018.5)
*小学校の英語専科指導教員とは?報酬や身分は?
*文科省の言うところの「地域人材」枠との違いは?
小学校英語指導者認定協議会のJ-shineの認定とは?
*臨時教員免許状の発行はある?
2020年から公立小学校での英語授業が正式導入されることになり、英語指導の先生が採用され始めているニュースを聞きました。英語教育に一番必要なのは、優秀な先生の確保であると思い、大変良い傾向と感じていました。ところが、その先生方の給料面などを含めた待遇が、地域によってまちまち、しかも、学生アルバイト程度の待遇しか得られない先生方も多いと知り、憤りを感じています。優秀な人材の確保には、それなりの待遇を用意すべきというのが、私の考えですが...
とりあえず、現状を調べることにしました。

Facebookでの、私の質問とお応えいただけた回答
    鹿児島県薩摩川内市の場合 (2018.5.28)


私の質問:
1.小学校英語指導の有資格とは、J-shineの認定を受けたということ?

2.J-shine の認定を受けないと、小学校で指導できないのでしょうか?

3.英語指導の先生の待遇が、地域によってバラバラなようですし、また、お立場も不安定な印象で危惧しています。実際どうなのでしょうか?

回答:
鹿児島県薩摩川内市からです。こちらの教育委員会では、本年(2018年)4月より、5・6年生の英語教科化を先行実施しています。

Q1・Q2について
J-Shineは国家資格ではありません。鹿児島県の薩摩川内市の小学校英語講師(独自にESTと言っています。春に、市の教育委員会独自の公募により、日本語と英語の面接試験を受けて採用となりました。)は、J-Shineの取得は必須ではありません。全国的にも、まだ必須でないところの方が多いのでは?

Q3について
理想を言えば、国家資格である教員免許を持った先生が教えるのが理想でしょうが、その教員免許を持っている先生ですら、各県の教員採用試験は中々難しく、鹿児島では、とんでもない競争倍率で、逆に正規採用になってない先生は、正規採用の先生の産休中の代用で期限付きだったりします。ですから、そう言った、期限付き(教員免許所持)の先生の処遇が改善する見込みもまだたってない段階では、「英語講師」の待遇の改善は、恐らく、まだまだ先になると思います。私の教えている、薩摩川内市でも、時間給で、交通費は別途市の規定で支払われますが、年金も保険もついて居ません。市の教育委員会では、将来的には、まず「嘱託員」化は、検討しているという事でしたが、2020年の全国的な小学校英語の教科化までは、それもなさそうです。
ですから、私立の小学校はわかりませんが、小学校英語講師だけで、食べられる人は、まず、現状では居ません。


千葉県鎌ケ谷市の場合 (2018.7.24 教育委員会からの回答)


 「本年度より配属された小学校の外国語専科の教員は、みな正規の職員です。」 という回答を受けました。千葉県全域で、このようになっているかどうかまでは、確認できていません。ただ、行政の予算が潤沢ではない市でも、小学校で英語専科の正規職員を得られるということでした。
 鎌ケ谷市の小学校は8校あり、2018年は、まだ最低限の時間での英語の授業になっています。現在は、各校に1人の英語専科の正職員と、英語ネイティブのALTで協力しながら、授業計画を立てているということです。私はこのような事情を当初知らず、6月に市内某小学校の校長先生とお会いして、「無償ボランティアでもよいので、協力できることがあれば…」と申し出たのですが、必要ないようでした。こちらのサイトの「小学校の英語教育での活用法」については紹介はさせていただき、「関係者に伝えたい」というお言葉を頂きました。地域によって、英語専科の教員の待遇はずいぶん違うものだと痛感しました。


小学校の英語指導教員の報酬ってどれくらい?
eigo-t.netより(2010年)

 英語だけ教えるという立場のため、殆どの場合常勤ではなく、数時間のみの勤務ということになっているようです。
 小学校英語指導者全体で平均時給の統計を取ってみたところ、約1,110円となっています。一番低い人は「無償ボランティア」で、一番時給の高い人は8,000円~9,000円程度、地域・事情によってかなり差があるのが実情です。
 平均的な時給の相場としては、1,000円~2,500円程度といったところのようです。


J Shine 特定非営利活動法人・小学校英語指導者認定協議会
(2018.5.28…新情報はこちら

 小学校の英語指導者の待遇は、現在、アルバイト程度の扱いのところが多いようで、英語指導者の仕事だけで食べていくのは、相当大変なようです。このような状況下で、上のような認定機関の存在を知りました。また、このような認定を受けるため、20万円ほどかかる対策講座まであることも知りました。しかし、実際、認定された人が、良い待遇で採用されるとは限らないこともわかってきました。いったいどういうことでしょう???

「小学校英語指導者資格」を取得したい方は、J-SHINE の認定を受けた登録団体が主催する「指導者養成講座」を修了し、その団体より「小学校英語指導者」としての推薦を受けなければなりません。 ご自分が研修を受ける団体を決め、受講修了時にその団体の「資格認定の手続き」に従い書類などを作成し、指導者認定審査料とともにその団体へお申込みください。
また、研修講座の受講修了のほか、次の 2 点の基準を満たしている必要があります。
 1.指導時間 50 時間以上の実施経験があること。
 2.英語力の目安として、英語で授業が行えること
2021年10月3日加筆》
 2020年(?)には、小学校5・6年教科になったため、小学校の英語専科として働くには、教員免許を取得するのが近道と感じました。評価などは、教職免許がないとできないため、もはやJ-SHINEの民間資格は、あまり意味がないかと思います。
 ただ、私の知り合いに、外資系の企業で働いた後に小学校の教員免許を取得し、「英語専科」で採用されたはずなのに、いきなり高学年の担任となり、英語以外の授業もする羽目になった人がいます。先生の人出不足が原因のようで、怖ろしい話です。




英語のアシスタント教員の現状 (2021.10)
/Facebook「小学校外国語教育を盛り上げよう!」グループ内情報より

《小学校英語が教科として導入されてからの各校での支援体制は?》

*名古屋市某小学校/外国語指導アシスタントの制度
…小学校の数が多いためか、ALTがカバーできないところもある。アシスタントは教員免許は必要ないが、ある程度英語ができる人が業務委託される有償ボランティア(時給制のアルバイトのようなもの)。アシスタントは学級担任とのTeam Teachingだが、21年度から教育委員会より「担任の先生メイン」の指示あり。

*北海道/某公立小/英語学習支援サポート
…英語専科の先生とは別に、サポートがつき、個々の児童の質問への対応や特別支援児童のサポートを担当。
担任は英語授業に関与しない
(教員の働き方改革⁉…大変良い制度と思いました。)

*鹿児島市/外国語指導アシスタントのような制度
…英語専科の先生がいる学校もある。アシスタントは学級担任とのTeam Teaching。学校によってはた

*千葉県市川市の公立小/外国語活動指導員
…指導員は教員免許は必要ないが、立場上は担任のサポートがメイン。授業案の作成も行う。教育委員会は「メインは担任で!」という立場だが、英語が苦手の担任の先生もいるのでむずかしい。担任の先生は忙しく、授業案の打ち合わせの時間が取れないのも問題。現在6年生のみ、教科担任制を導入。

*千葉県某市/英語指導コーディネーター
…学級担任=T1/ ALT=T2/ 英語指導コーディネーター=T3
コーデネーターは、教育委員会指導課所属の会計年度任用職員。レッスンプランを作成し担任に前もって説明するなどしてきたが、2022年3月で派遣修了とのこと。4月からはコーディネータ―が長年作成してきたレッスンプランやフラッシュカードなどを使い、学級担任とALTだけで授業を行う予定。また、英語専科の先生(中高英語の教員免許取得)がいる小学校もある。5・6年は教科となるので、今後は教員免許がないとむずかしくなっていくと思われる。

*東京都/5・6年生の授業の英語支援員
…2020年6月より導入。時給制。担任の先生メインで、そのサポート。
コロナで授業数が減り授業が駆け足状態。担任の先生は、英語に苦手意識のある先生もいるのに、忙しすぎて打ち合わせの時間も取れない。

*茨城県結城市/LEE(Let's Enjoy English)
…英語専門指導員・英語活動指導員。役目は日本人版ALTで学校にいる間は英語で話す。1~4年生の英語活動をT2の立場でサポートしているが、殆どの学校は任せてくれている。

*関西某市の公立小/英語指導協力員
…3・4年生はALTがPlanを作成。担任が授業。ALTは3回に1度授業に参加。
5・6年生は担任や英語担当の先生がPlanを作成。協力員が発音などで補佐のTeam Teaching。教育委員会は1人で授業ができるようにと協力員を減らしていく方向。協力員の採用は市の予算次第。現場の目からは協力員が必要と感じるが、現場の声は届かない?

*大阪挟山小学校/地域ボランティア・英語活動支援の会
…担任の先生の負担軽減。英語を使える日本人のモデル、活動の紹介のための支援員。時間給と交通費を市教委が支給。

*その他
・文科省の指導案…使っている先生と使っていない先生、入れ替えなど微調整をして使っている先生がいる様子。

・英語…外国語指導アシスタントには、学校内での子供達とのコミュニケーションは「英語only」と教育委員会から指導ある場合も。ただし担任の先生は日本語OK。3年4年生はかなりむずかしく、ジェスチャーや絵などを使ってコミュニケーションをとることもある。(名古屋某小学校)




ReseMom(2017.12.19)より

  
文部科学省は平成29年(2017年)12月18日、新学習指導要領の全面実施に向け、平成30年度(2018年)の公立小学校の教職員定数について、質の高い英語教育を担う「専科指導教員」を1,000人増やす方針を明らかにした。林芳正大臣が同日の記者会見で明言した。

 平成30年度予算について、林大臣と麻生太郎財務大臣が折衝し、合意にいたった。小学校の英語教育の早期化・教科化に伴い、英語を専門的に教える専科指導教員を確保するため、義務教育費国庫負担金において平成30年度の教職員定数で1,000人の加配が実現することになる。

 会見で林大臣は、新学習指導要領における小学校の英語教育対応のほか、平成32年度段階での学級数の減少、学校における働き方改革の観点から教職員の必要数を見直した結果、「平成32年度までの3年間で約4,000人の定数改善が必要だと見込んだ」と説明。平成30年度は移行措置期間として4分の1にあたる1,000人の改善が認められたとの見解を示した。

 平成32年度(2020年)から全面実施される小学校の学習指導要領では、中学年で「外国語活動」、高学年で「外国語科」を導入。3~4年生は年間35単位、5~6年生は年間70単位の外国語授業を実施する



全国に、小学校はどのくらいあるのでしょうか?
 文科省のサイトで示されたデータによると、平成27年(2015年)度は、20,601校。このうち、公立小学校は20,302校とのことです。平成30年度は英語専科指導教員確保のため、教職員定数1,000人の加配。平成32年度までに4,000人の加配…ということは、1人で5校担当するということでしょうか?
世間では、「4,000人も増やす。すごい!」と思っているのでしょうか?なんだかな~と思ってしまいます。





文部科学省のホームページに新教材説明会で配布された資料(5・6年生用)

 
以下、2017年11月12日に、上智大学特別招聘教授の吉田研作先生のフェイスブックでシェアされた情報です。文科省のページの閲覧は、どうも自由ではないようですが、こちらのサイトにいらっしゃる方で、これを悪用したり、商用目的で使われる方はないと信じ、掲載します。どうぞよろしくお願いいたします。

 文法の内容は、小学6年生になると、現在の中学2年生が習う、不定詞や動名詞まで含んでいます。何度も書きますが、英語は覚えたと思っても、すぐ忘れてしまうもの。今の中学2年生でも、理解がおぼつかない生徒が多いのに、ここまでの文法を含んだ内容にする必要があるのか、私としては、理解に苦しむというのが正直な気持ちです。


小学校英語指導者認定協議会 - J-SHINE
10月13日 13:452017

【お知らせ】新教材の情報が公開されました。
文部科学省のホームページに新教材説明会で配布された資料(5・6年生用)が掲載されました。ぜひ、下記URLからご覧くださいませ。
http://www.mext.go.jp/…/chou…/shotou/123/houkoku/1382162.htm...
※今後も随時資料が更新される予定とのこと。
また、3・4年生用の新教材も追って公表の予定です。

説明会の様子は文部科学省のYouTubeページにて動画が公表される予定です

《5・6年生向け英語の新教材に対する意見・2017.11》


 以下は、吉田先生宛てに、私の考えを書いた投稿です。先生の投稿が英語であったため、英語での投稿となりました。先生のご都合も考えず出した、ただの私見なので、ご返答は頂いていませんが、用意される予定の小学校の英語教材に対する私の率直な意見として、こちらにも掲載しておきます。

 「教科書は楽しそうにできているが、
内容が難し過ぎるのではないでしょうか。日常生活で英語を使う機会がほとんどない日本では、生徒達は覚えてもすぐに忘れてしまいます。簡単な単語や言い回し、文法などを、まず繰り返し練習して覚えることが、子供達には物足りないかもしれないけれど、大切なのではないでしょうか。そもそも、生徒を楽しませるということに重点を置いた教材が、本当に生徒が英語を話す力をつけるのに役立つのでしょうか。」というような趣旨の文。
私立・公立問わず、実際、英語が苦手で苦労していた中高生を見てきたものとしては、色々思うところがあります。


以下、投稿文

「Thank you for sharing us New Elementary School Text Book and other files.

Text books look interesting but these curriculums seem so difficult for elementary school students.  Is making interesting books and making students interested really important?  Is it really useful for them to be fluent in speaking English?

As we Japanese usually have few chances to speak English in everyday life, it's too difficult to maintain knowledge on English. Studying easy words, easy phrases and easy grammar repeatedly seem so boring for students, but I think that is the most important thing to do to learn foreign languages. Even in junior high schools, students easily forget what they learn, but it’s not unusual thing. It’s normal unless they study repeatedly. Every teacher should tell their students about it...I think.

I have been struggling with many problems brought about by English teachers of high schools as well as junior high schools. I came to the idea that the reason why Japanese are not good at speaking English is mostly related to the skills of teachers.

I would appreciate it if you would check my HP on English Education at school.


Thank you.

http://makki-english.moo.jp/contentsfirst2.html











                












MEMO↓
facebookで頂いた反響を投稿者名を臥せていますが、自分の励みのために勝手に載せさせてもらっています。すみません。

Makki English さん、"小学校の英語教育について" の部分を中心に、HP 拝見させて頂きました。
とても膨大な情報なので、小学校以外の部分やリンク先などまで全て拝見できたわけではないですが、何回も頷きながら拝読させて頂きました。
網羅的かつ系統立った構成で素晴らしいですね‼️  
基本的な文法、フォニックス、spelling などの学びに関するご意見に関して、個人的にはとても納得できる部分が多い一方、初期の義務教育段階で、それらはあえて教えない(フォニックスに関しては、"教えない"という表現は少し語弊がありますが)という学習指導要領の内容も、一定程度理解できるとも感じています。
特に文法に関しては、これまで長い間、文法訳読法的なアプローチでの英語教育の反省に立って(中・高・大+α の長期間英語を勉強しても、話せるようにならないばかりか、英語嫌いを増やすことを助長してきた側面が大きい?)、小学校段階では、あえて文法は教えないことになっていると理解していますが、母語を学ぶプロセスでは、文法など全く学ばなくても、膨大な量のインプットをコンスタントに得続けることで、自然と言語習得できるのに対して、ごく限られた時間で、言語の基礎をできるだけ効率的に学ぶためには、私も、高学年くらいの段階から、ある程度の文法(フォニックスも)は教えた方が良いのではないかとは感じています。
(小学生に対して、分かりやすく文法を教えるには、かなりの指導力が必要なのも事実だと思うので、意外と難しい問題だとは思いますが...。)
去年の6月から、小学校の現場で英語教育のサポートをする立場になって、現下の個人的な目標は、実は、6年生を終える段階までで英語の基礎力をつけることではなく、できれば、子供達に英語を学ぶ楽しさを感じてもらうこと。
"最低限"の目標としては、私が関わった子供達が1人も英語嫌いな状態で中学生にならないことです(かなりチャレンジングな目標だと思っています)。
公立小学校に通う子供達の英語に対する関心や英語力のレベルは、かなり大きな差があることが分かってきたので、個々人への対応がなかなか難しかったり、ご指摘の通り、特に5・6年生で学ぶ内容は、正直(文法的に)難しすぎるとも感じています。
外部人材の上手な活用が、各地でもっと進めば良いと切に願っています。