1)中学での英単語の発音・覚え方の指導について
           
(2017.3.7改訂)

①発音指導が不十分な学校があるのでは?
 

 塾の講師をしていて、気づいたことがあります。それは、「英語の発音がうまい生徒と、うまくない生徒の間に、相当な格差がある。」ということです。

 現在、多くの公立中学校でも、ALTを入れ、さらにスピーチコンテストを行ったりで、英語の話す力の向上に力を入れているのはわかるのですが、格差の広がりを感じます。理由の1つと考えられるのは、「幼児・小学生対象の英会話教室で、学習経験があるかないか」です。幼いころからの学習経験は、「恥ずかしがらずに英語らしい発音を練習できる」という意味において、それなりの効果があると思います。ただ、現状では、すべての子供が、このような経験をできるわけではありません。

 2011年に、「2012年度の市の事業に対する事業仕分」の「市民評価員」に選定され、「外国語指導助手(ALT)に要する経費」の事業仕分に同席する機会がありました。その際、「なぜALTが必要なのですか。」という仕訳人の質問に対し、市の担当者は、「ちゃんとした発音ができるように」という事を何度も強調されていました。仕訳人から、「その役目は日本人の先生ではだめなのですか。」と返され、かなりやり取りが紛糾した記憶があります。私個人としては、「外国人と日本人がコミュニケーションをとれる素晴らしい機会を得られるALTの活用」には賛成なのですが、問題なのは、「なぜ市の担当の方が、発音ばかり強調してしまったか」ということです。

 私は、中学校で初めて英語の正しい発音を教えるならば、ネイティブの外国人より、英語を母国語としない日本人の方が向いていると思っています。(ただし、幼児や小学校低学年の児童や、物まねが得意で、ネイティブのような発音をすぐできてしまう生徒は別ですが・・・)
 中学生では、大きな声で英語を発音することに、抵抗を感じる生徒もいます。この時点で発音に苦手意識があるなら、なおさらです。それではどうすれば良いか。わたしは、「
正しく英語が発音できるためのノウハウ」を教えてあげれば良いと思います。中学生であれば、耳から聞いて、ただ真似をするのではなく、理論で教えた方がうまくいくことも多いと思います。日本人に難しい発音は、外国人には理解できません。日本人だからこそわかるのです。

 このホームページの 日本人が英語を話すために絶対覚えておきたい4箇条」の中の、L, F, V, N, th…これが日本人の苦手な発音でも説明していますが、ある程度の発音の決まり(基本的なフォニックス)を、中学入学直後、生徒にしっかりご指導いただきたいです。特に、「N」の発音については、自分自身大変苦労しました。理論でわかってしまえばとても簡単なのに、残念ながら、多くの英語指導者と接してきましたが、
「N」の発音を「ン」ではなく「ヌ」のようにすると、正しく教えていたのは、たった一人、それも日本人でした。ネイティブの方(カナダ人)に、「oneの発音は、最後に舌の先が上の前歯の裏側にタッチしますよね」と確認すると、「初めて気がついた」と言っていたくらいです。彼らは何も気にせず発音しているので、日本人がその発音をできない理由がわからないのです。

 「N」の発音について、わかりやすい例を上げると、チキンハンバーガーをオーダーする時の、「chiken」という単語です。まず、「i」にしっかりとアクセントを置き、「n」の発音を日本語の「ン」ではなく、「ンヌ」と、ぬける感じで発音できれば、簡単に相手に理解してもらえます。しかし、それができていないと全く通じません。
 「hat」など、強くアクセントを置くべき「ha」を、うまく出せない生徒の指導で、口の前にティッシュペーパーをあて、紙がしっかり揺れるように発音してみるなどの指導をする先生がいるそうです。素晴らしいですね。
 このネット社会、日本人が苦手な発音を、うまく指導できる方法を、先生方で共有できないものでしょうか。


 
私は、発音に関して、ネイティブのようにきれいな発音は一般的に必要はないと思っています。いろいろな国の人と英語で話していて、「発音が下手だから恥ずかしい」などの素振りを見せるのは、日本人くらいなものです。中国語なまり、スペイン語なまりの発音でも、皆、堂々と話します。英語は母国語ではないのですから、通じる英語が話せれば、十分なはずです。私は、外国の在住経験も留学経験もない人間ですが、通訳案内士の資格を取れました。こちらのサイトで紹介しているルールで発音していれば、通じる英語を話せるようになるのです。

 
通じる英語を話せるように、最低限の発音のルールを、生徒にご指導いただきたいです。もし、発音に苦手意識のある先生がいらっしゃいましたら、こちらのサイトの発音ルールを生徒に教えてあげてください。生徒の発音の方が上手になってしまったら、それを褒めてあげればいいのです。発音を理論的に説明できることは、上手に発音できることより、先生の資質としてずっと大切なことと、私は思うのです。

 文科省から、「英語の授業は英語で!」という話が出る中、英語を話すことが得意な先生の中には、いきなり授業中にペラペラ英語をしゃべって、生徒を困惑させている方もいらっしゃるようです。英語は知識をひけらかす道具ではありません。コミュニケーションの道具です。自分の英語が生徒たちに理解されているか、見極めながら話してください。
 中学レベルでは、ある程度使うフレーズも限られてくると思います。英語が苦手な生徒が戸惑わないよう、あらかじめ使用する指示文などの、発音と意味を教えてから授業を進めると、理解されやすいのではないでしょうか。

 中学・高校の授業で使われる英語での指示文 のページで、授業内で役立ちそうな英語のフレーズをまとめています。まだまだ十分ではありませんが、このようにまとめたものをプリントにして、予め生徒に配布しておけば、リスニングが苦手な生徒の助けにもなると思います。
生徒が理解できる授業を、お願いいたします。




②英単語の綴りを書く事が苦手な生徒への支援が必要なのでは?

 英単語を覚えるにあたり、私が一番大切だと思うのは、「読める」そして「意味がわかる」ということです。「英単語の綴りを書ける」というのは、その後の話と思います。ネイティブの学生でも、最近はネットの影響か、正しくつづりを書けない生徒も増えているそうです。しかし、そんな生徒でも、もちろん英語でコミュニケーションはとれるのですから・・・

 しかし、今の日本の中学校では、残念ながら「英単語の綴りを正しく書けること」に、かなり重きを置いているように思えます。もちろん、正しい綴りを書けるということは、大切です。ただ、そこに、多くの時間を費やし過ぎて、結果的に語彙力の不足を招いているのが気になります。

 さらに、問題と思うことは、この「綴りを覚える能力は、個人差が大変大きい」ということです。幼少期に英会話を習っていて、中学入学当初は英語が好きだったのに、綴りがなかなか覚えられず、英語嫌いになってしまう生徒を多く見てきました。


*綴りを書くのが苦手な生徒は、次のどれかの特長があります。

  1. ローマ字を書くことも苦手である。

  2. アルファベットの基本的な発音のルール(フォニックス)が全く理解できていない。

  3. 1つの英単語を書く時、1度見ただけではノートに書けず、何度も見ながら書いてしまう。

 ローマ字と英単語は全く関係なく、ローマ字を教えることが、日本人の発音を悪くしていると思われている方もいるようですが、そんなことはありません。例えば、「ぺ」をローマ字で表すと、子音の「p」(プゥ)と母音の「e」(エ)の組み合わせて「pe」になるわけですから、「p」の正確な発音・フォニックスを指導できれば、ローマ字を覚えながら、英語の正確な発音も覚えられるのです。

 「ト」は、子音の「t」(トゥ)と母音の「o」(オ)の組み合わせの「to」です。もしこの時点で、「t」の発音・フォニックスをしっかり指導できれば、「pet(ペット)」の綴りを見れば、これは、日本語の発音「ぺット」と違い、「トゥ」のように、語尾の子音を息が漏れるように、英語らしく発音ができるはずです。そして、この発音ができれば、逆に綴りを書く時も、必ず語尾を「to」ではなく「t」に、できるはずです。

 中学2年生で、基本的な発音のルールさえ理解していれば、簡単に書けるはずの「desl(机)」も書けないという生徒に、何人も出会いました。ただ、このような生徒に、英語のフォニックスの基本ルール を教えてあげると、少しずつ綴りを書けるようになり、その後、英語の学習がスムーズに進むようになりました。
 
ごく基本的なフォニックスの指導で、英単語の「発音」と「綴りを書くこと」の習得に大変役立ちます。できれば、小学校のローマ字指導の際に正確なフォニックスをご指導いただくことが理想ですが、現状では難しいでしょうから、最低、中学1年の早い段階で、ご指導いただくことを望んでいます。

  参考:ローマ字も英語らしい発音で練習しよう!


 ローマ字も書けるし、発音も得意な生徒の中にも、綴りを書くのが苦手な生徒も居ます。そんな生徒の特徴は、
1単語を何度も見ながら、ただ書き写すだけの作業を繰り返してしまうのです。生徒のそばで、視線の動きを観察していて気づきました。そんな時、「英単語は、一度だけしか見てはだめ。一度見たら、単語は隠して書くように。」と指導したところ、一生懸命単語を覚えて書くようになる生徒もいました。そういう場合は、心配ありません。すぐに上達します。しかし、それでもうまくいかない生徒もいます。そのような生徒に、ただ「書いて覚えて!」ということで、何回もノートに単語を書かせる宿題を出しても、全く意味がありません。

 思い出深い生徒がいます。当時、彼女は中学1年生でした。塾に来た当初の彼女は、fatherやmotherの綴りを100回書いても覚えられませんでした。彼女の視線の動きを見ていて、彼女も、ただ単語を書く作業をしているだけだということがでわかりました。fatherを1度書くのに、2~3回、元の単語を見ているのです。さらに彼女には、LD(学習障害)あるいはADHD(注意欠陥/多動性障害)の傾向も見受けられました。その生徒に、「ざ~」のところは「T」「H」「E」「R」、「mother」も 「father」も「 brother」も全部同じと、何度も繰り返し言葉をかけていると、自分でも、
「T」「H」「E」「R」と繰り返しながら単語練習をするようになり、しばらくすると書けるようになりました。一度できると自信も深まるのか、だんだん単語を覚えられるようになりました。一度は「彼女には英語は無理なのでは・・・」と、諦めかけたこともありましたが、彼女は中学卒業時、英検3級に届くレベルまで、英語がわかるようになってくれました。私が、英語学習で絶対必要と考える、「大きな声で音読」というのを、恥ずかしがらずにやってくれたことも、良い結果を出せた要因かもしれません。このような経験から、私は、「英語はその気になれば、誰でもできるようになるのだ。」という気持ちを、強く持つようになりました。

 
綴りを覚える事が苦手な生徒に対し、「ただ書いて覚えさせる」というのではなく、「フォニックスを利用した覚え方」のご指導を、お願いしたいと思います。

  参考:まとめて覚えると覚えやすい綴りの一覧





③英単語の覚え方の指導も必要なのでは?

 わざわざ、「英単語の覚え方を教える必要などない。自分で工夫するものだ。」という考え方もあるでしょう。しかし、現実問題として、「出だしのつまずきがその後の英語学習に大きな影響が出る。」という事も事実です。

 単語を覚えさせるために、「単語を何度も書かせる」というやり方は、割と一般的な気がします。しかし、上にも書きましたが、このやり方では、全く成果の出ない生徒もいるのです。私自身覚える事が苦手で、「単語をじっくり見て、形で覚え、覚えたら空でスペリングを言ってみる」というようなやり方で、やっと単語を覚えられるようになった記憶があります。

 さらに、すぐに忘れてしまうので、単語帳やリングノートを作っていました。以前は一般的な事であった気がしますが、最近、このようなものを作っている中学生をあまり見かけません。IT時代ということもあるのでしょうか。学校の授業の一環として、単語の意味調べを自分のノートにさせたり、テキストに沿った市販のワークで、英単語の意味を書かせていることは、よくあるようです。しかし、そのノートに、文法や板書も一緒に書かせたり、練習問題もやらせているので、「単語や熟語だけのまとめ」にはなりません。覚えるのが苦手な生徒に「単語帳等を作る」というようなアイデアの指導は、あった方が良いと、思うのですが、いかがでしょう。 

  参考:英単語・英熟語の覚え方、辞書の引き方について


 「記憶について」でも書きましたが、人間は忘れるのが当たり前で、日常使う機会のない英語など、何度も何度も繰り返し覚える必要があるということを、生徒にもっとしっかり教えていただきたいです。また、文法の授業に沿って覚えた方が良い単語も多いので、覚えるタイミングを適切に支持することで、より成果が上がるはずです。特に、動詞の活用を教える時期などで、適切な指導ができている学校とそうでない学校では、大きな差が出ています。

  参考:覚えるべき文法…活用を覚えるべき時期について

 さらに
、「単語テスト」を頻繁に行う学校と、殆ど行わない学校でも、生徒の語彙力に差が生じています。以前は、「単語テスト」などくだらないと感じていましたが、生徒の勉強の動機づけには、「単語テスト」はとても有効と思います。塾で単語を覚える必要性を訴えても、学校でテストがなければ、勉強しない生徒も少なくないのです。

 ただし、暗記力に自信のある生徒の中には、テストの直前に単語を完璧に覚え、2~3日ですぐに忘れるという生徒も多いです。これでは、殆ど意味がありません。記憶の法則を考えると、1ヶ月間は、記憶に留める努力が必要です。新しい単語テストの際、何割かを、以前の範囲からも問題を出すなど、工夫していただきたいです。

 
英単語の綴りばかりを練習している生徒に、「その単語はどういう意味?」と聞くと、驚くことに答えられない生徒が少なくありません。やはり、「発音ができて、日本語で意味が言える」のが、英単語覚えの基本、と思います。綴りを書く練習をさせるより、綴りを書けなくても、発音と意味がわかる単語をどんどん増やすことが、英語力アップにつながると思います。単語テストでは、意味を日本語で書かせる問題を増やしてほしいです。


 
「英語でコミュニケーションをとれるために・・・」生徒へどのように指導することが最も効率的なのか、再考願えないでしょうか。




                 


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