3 高校の英語教育について 戻る

文部科学省は「英会話」に重点を置いた指導を、益々教育現場に求めているようです。世間一般的には、とても聞こえが良い響きですが、実際の学校の現状を考えると、本当にうまくいくのか大きな不安を感じます。こちらでは、高校の英語の授業の現状・問題点・改善方法などについて、書いていきたいと思います。
 (2020年5月17日改訂)
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1) 授業を英語で行うことの問題点と改善策

 問題点  改善策  生徒から見た高校英語の問題点

  実際の授業で行っている有効な対策
   (2020年5月17日、SNSで知り合った前田先生に伺いました。)


2) 読解の授業と単語テストについて

3) 英語で進める授業のために役立つコンテンツ

1)授業を英語で行うことの問題点と改善策

問題点
先生の英語を話す能力と、生徒の聞く能力


 2013年から、「高校の授業は英語で行う」ことが基本となったようですが、私の塾の生徒(千葉県)で、そんな教育を受けている生徒はあまりいません。それは先生の技能の問題なのか、授業を受ける側の生徒の問題であるのか…。

 これは中学の話で恐縮ですが、塾で教えていた中学3年生の生徒から聞いた話をご紹介します。(生徒は中2で英検準2級取得、2014年1月現在)
 中学3年の春の英語の授業で、海外研修を終えて帰国してきた先生が、いきなり英語で授業を始めたそうです。それまで英語で英語の授業を受けた経験のほとんどなかった生徒達は、全く聞き取れず、中学3年の大事な時期なのに、寝ている生徒も多かったとのことでした。先生は、かなり易しい英語で話しかけてはいたようですが、いくら先生に英語力があっても、これでは授業が成功しているとは言えないでしょう。

 たとえば、高校の授業で、先生が流暢な英語で、以下のようなに過去完了の文法の説明をしたとします。

In case of making the sentence of past perfect, you should grammartically pay attention to put a past participle after "had".

 中学校でそれほど英語での英語授業の経験がなければ、文法用語の「past perfect」,「 past participle」などの聞きなれない単語はもちろん、「sentence」や「grammartically」のような、文法としては基本的な単語でさえ、わからない生徒も多い気がします。リスニングが不得意な生徒は、単語の意味が分かっても、英文が理解できないかもしれません。
一言で「高校英語」と言っても、中学からの流れがあります。さらに、英語を話せるかどうかの本当の実力は、今の高校入試では正確に測れないのが実情です。高校生の英語実力は千差万別。ここに大きな問題があると思います。
 参考:自分の本当の英語力の確かめ方と勉強方法

 先生側はどうでしょう。世間では、英語を話す国での海外勤務が長かったり、留学経験がある人は、「みな流暢な英語を話せる」と考える人が多いようですが、そんなのはよほどの例外を除き幻です。英語を話すスピードは、継続して練習しないと衰えてしまいます。つまり英語の先生方は常に努力する必要があり、お忙しい先生方にとっては大変なことでしょう。公立・私立問わず、色々な中高生を見てきて感じるのは、
流暢に英語を話す先生の割合は、中学では1~2割程度ではないかということです。実際、英検準1級を取得しても、流暢に英語を話せない人もいるのに、英検準1級以上の中学教員の割合は30.2%、高校教員の割合は57.3%(2015年度の全国調査)でしたから、私の印象も的外れとは言えないと思います。英語教育は、小学校→中学校→高校と続いています。先生の英語を話す力の底上げも大事な問題と思います。


改善策

 生徒間格差があると思うので、中学であまり英語の授業に慣れていない生徒でもわかるような授業にするための方法など:

文法用語の発音と意味などを、関連文法の授業の前に先生が教えておく。
 文法用語や新出単語を1人で予習するのはむずかしいです。ただ、一度しっかり理解できれば、生徒も英語での授業を受け入れやすくなると思います。実際の授業を行う前の回に、次の授業で使うであろう、英語の発音と意味をあらかじめ練習しておくと良い気がします。あらかじめ発音と意味がわかっていれば、実際の授業では、生徒達は2回目に聞くことになるので、理解が深まると思います。

 英語で進める授業で1回の授業で行うこと
 …授業+次回の授業で使う文法用語や新出単語の意味の紹介と発音練習


生徒の実力に合った、生徒が理解できる英語を使って、先生が説明できるようになること。
 先生は独りよがりになってはいけないと思います。1つの内容を英語で言いう時も、簡単な表現を使った言い回し、違った用語を使った言い回しなど、複数の表現を使うことで、英語力の高い生徒も低い生徒も満足のいく授業ができるようになるのではないでしょうか。ただ、そのような授業をするには、先生の知識と英会話力の向上もかなりの課題になると思います。生徒のレベル別に、英語で指導するための例文集や用語集などがあればよいと思うのですが…。
 《参考》
 中学・高校で使われる英語の指示文 (当サイト内例文集)

 
JeN's Jyugyou/ジェンの授業 
  (英文法に厳しいカナダ人のジェン先生のYouTube動画、言い回しなどもとても参考になります。)


生徒の英語力が足りない場合は、生徒が理解しやすいように英語と日本語を混ぜて、何度も繰り返す。
 英語が苦手な生徒の多い学校で、英語だけの授業はかなり厳しいと思いますが、先生があきらめたら、生徒は救われません。何度も繰り返し聞けば、どんな生徒でもある程度は理解できるようになるというのが、長年塾で教えて得た答えです。

 例えば、前の例文を、以下のように説明してはどうでしょう。

1) Past perfect is 過去完了. OK?
2) I will show you how to make the setences. How to make はどういう意味?そう、「作り方」だったね。 
3) Put a past participle (過去分詞) after "had". 
過去分詞をput(置く)。どこに置くの? 
after "had"とは前、それとも後ろ?
4) Be careful. 気を付けて。
5) Don't forget to use a past participle. 過去分詞を使うのを忘れない事。
過去分詞、past participle.
Don't forget to use 何? 過去分詞? 
6) OK.  Understand? わかった?

 このような感じで、
英語と日本語を交えて授業ができれば、How to make, Put, after, Don't forget, Be careful, Understand?など、説明文でよく使えそうな言い回しを繰り返し生徒に聞かせることで、英語の意味を覚え、日本語を使う頻度を少なくしても、生徒が理解できるようになってくると思います。実際、understandもわからなかった生徒に、毎回understand?と付け加えたら、耳にたこができる感じで覚えてくれました。「耳にタコ」…英語にはこれが大事と思います。


 SNSを通じ、実際に英語で授業を進めている先生に「英語でわかりやすい授業と言っても、生徒の能力との兼ね合いもあると思いますが、どのような対策が考えられますか?」という質問をしたところ、とても有効と思われる対策を伺いました。英語での授業は困難を伴うことも多いと思いますが、効率的に授業を進める一助になると感じ、ここで紹介させていただきたく許可を得ました。是非ご一読いただければ幸いです。(2020年5月17日)
前田浩之先生より
 Landmark EC 2 指導書執筆/FLEX EC123 執筆

①単にリスト文を覚えさせるのではなく、
先生の英語での指示のもとに実際に生徒に動いてもらい、英語の必要性を感じてもらう。(Total Physical Response)

②英語が苦手な生徒でも理解できるように、
実際役立つことを、少しずつ,段階をおって指導する

③すぐ忘れてしまうことを前提に、
ひとつの表現をばらばらに指導するのでなく、前にやったことと連動するようにする。Scaffolding「はしごかけ」の考え方


 基本は中1、高1からできないとなかなか浸透しないのが現状です。鉄は熱いうちにうてですね。

 さまざまな能力の生徒が混在し、40人の生徒を相手に指導する中高の現場です。英語の能力がそれほど高くない場合TPRで、スモールステップで段階的に導入するのが最もやさしい導入方法かなと考えます。

TPRとはトータルフィジカルレスポンスの意味で、教師の指示の通りに実際に生徒に「動いてもらう」やり方です。

 また、単にリスト文で覚えなさいと言っても、その威力を分かっていない生徒に言ってもムダなようが気がします。 実際役立つことを、少しずつ,段階をおって指導する必要があるかと思います。ひとつの表現は、ばらばらに指導するのでなく、前にやったことと連動しているのがよいと考えます。Scaffolding「はしごかけ」の考え方です。

 いずれも最初は先生がモデルとしてやってみせる。次に生徒にやらせてみる。文字で学ばせるのはそのあとかなと思います。以下に例を示してみます。
《例文は少し抜粋して掲載しています》

Stand Up. Sit down. Raise your right hand.
Open your textbook. Pick up your pencil.

黒板を使って
Come to the blackboard. Pick up a piece of chalk.

(教師が実際に描いてみせてから)
Draw circle. Draw Doraemon. Draw triangle above the circle.
Write down the word cat. How do you spell cat? C-A-T
How do you pronounce the word? (指をさしながら)

There are two syllables(音節) in this word, peo/ple.
Put the stress(アクセント) on the first syllable.
Repeat, Peo/ple.  

Please put the letters in the right order (正しい順番)
ねこ  TAC →

Which verb form (動詞の形) is correct?
I ( went / have gone ) to the lake yesterday.

Choose the opposite word from below.
good ( small, short , bad)

Match the words to the pictures. /dog……(動物のイラスト)

Odd one out. (仲間はずれを選べ)( horse, rabbit, bear, cherry )

What is the best topic?
It is good to have a dog as a pet. It is useful. It can work as a guard. It can remove your stress. When you play with your dog, you can feel relaxed.
A) You should have a dog as a pet. B) How to feel relaxed

Which sentence comes at the end?
I had a cold. I had high fever. ( ).
A) I enjoyed playing video games all day.
B) I was in my bed all day.

Which is the best for the blank (空欄)?
I like my dogs, ( ) sometimes playing with him makes me tired.
A) and B) but

 つまり、言語を使うにはそれなりの理由やちょっとしたタスクが必要かと思います。理解したり必要と思わせるしかけを作る。教室英語を指導するにしても 上記のように生徒がやる「仕事・動作」をベースにし、前にやったことが生きる形で導入していきたいです。

 1つのレッスンでどんな課題を生徒に課したいか、で前もって行う教室英語の導入手順が決まるかもしれませんね。いずれにせよ、少しずつ導入するしかないですね。

 英語のリスニング力をあげるには
1)語いの少なさ →増やすしかないです
2)日本語式の発音→英語のリズムや音の化学変化にならしていく
3)リスニングの目的に気づかせる (TPRなどで自然と)
4)前から意味をとることにならす (スラッシュリーディング等で)
5)そもそも読解量が全く足りていない 
6)処理速度が遅い(2倍速ぐらいで音声を聴かせ→その後1倍速)

などが考えられます。でも一朝一夕では改善はしません。進み具合の遅さにときどき絶望したりもします。やったことも忘れるのはしょっちゅう。日々格闘しています。
以上、前田先生からお伺いした指導法でした。この場を借りてお礼申し上げます。



《生徒の側から見た高校英語の問題点》


 私が中学、高校、公立や私立の色々な生徒を見てきて思うのは、生徒の英語力の格差がとても大きいということです。高校ならば、受験があるので、同じような実力の生徒が入ってくると思われがちですが、英語に関しての格差は他の教科の格差よりもずっと大きいのではないかと思います。高校の先生方は本当に大変であると同情します。

 ただ、生徒の話を聞いたり、様子を見る限り、高校の先生方の英語指導力も千差万別であると思いました。ここでは、私が非常に驚き、問題であると感じた授業の一コマを紹介します。反面教師(?)としてお読みいただけると幸いです。

偏差値の高い公立高校の1年生より;
 中学で、ほとんど5文型について教わっていないのに、「ここはもう中学でやったよね」と言われ、先生に説明してもらえませんでした。別の中学出身の人は習っていたようで、わかっている人と、わかっていない人で、どんどん差が開いた気がします。
 毎回、新出単語の説明プリントが配られたのですが、すべて英英辞典からの引用がついていて、予習でやっておくように言われましたが、まだ習っていない分詞構文(?)なども入っていてむずかしすぎて、時間をかけてもなかなか理解できません。特に先生からの説明もないので、英語が苦手な友達は、益々英語嫌いになってしまいました。
《私の考え…中学の英語教育格差は非常に大きいことを念頭に、公立高校なのだから、基本をしっかり教えてあげて欲しいです。高1の初め、出だしが肝心です。
なお、できる先生ほど英英辞典を推奨されますが、私は、英英辞典は英検2級以上くらいの実力になってから使って欲しと思います。自分もそうでしたが、十分な実力がなにのに、英英辞典で学ばされるのは、ただただ苦痛で時間の無駄でした。》


偏差値の高い公立高校の3年生より;
 受験問題を解く文法力向上に力を入れているせいか、授業中に英語を話す機会がほとんどありません。英語は前から得意で大好きなのですが、英語がどんどん話せなくなっている気がします。
《私の考え…時代に逆行している…》

英語教育に力を入れている市立高校の1年生より;
 英語教育に力を入れていると評判の高校に入学でき、授業を楽しみにしていたのに、全部英語で授業が進められ、文法の説明は、質問してもほとんどしてくれず、何を言っているのかわからないことも多く、英語が嫌いになりそうでした。幸い、途中から、聞き取りやすい英語を話し、説明もわかりやすい先生が加わり、英語好きが戻りましたが、前の先生には本当に困りました。
《私の考え…日本人が英語を理解するには、文法の理解が重要なはずですが…。先生同士で、もっと意見交換をすることはできないのでしょうか。「誤りを正しながら成長する」というのは、一般社会では当たり前なのですが…》

偏差値が中程度の高校2・3年生より;
 《高2》先生は英語を話さないどころか、単語の発音を一切教えてくれず、「辞書を引きなさい」とだけ言います。教科書の音声は、ネイティブの音声のCDを流してくれますが、CDだけだと速すぎて、何を言っているかわかりません。英語の訳はちゃんとやってくれるので意味は分かるのですが、せめて進出単語の英語の発音は教えて欲しいです。
 《同じ生徒が高3になって…》先生が変わって、訳を全くやってくれなくなりました。前の先生はスラッシュリーディングのやり方を教えてくれたので、教科書の意味は理解できましたが、今度の先生は教科書の「意訳」だけ配って、全然説明してくれません。教科書が全く理解できなくなってしまいました。テストの時は、前の先生が同学年の違うクラスの担当なので、作ったプリントをもらって勉強しています。ただし、今の先生にばれるとまずいようで、「内緒であげるからね」と言われました。
《私の考え…発音に苦手意識があり、あまり流暢ではなくても、CDより目の前の先生に発音を教わりたい生徒もいます。こちらのサイトにも、発音のテクニックを書いているので、それを生徒に指導してあげてください。
直訳をやらずに意訳だけで済ませるのは、大いに問題です。スラッシュリーディングは英語を話せるようになるために、日本人にとっては非常に優れたテクニックですから、是非生徒に教えていただきたいです。
先生どうしで、生徒の英語力を伸ばしてあげることを本気で考え、話し合いを持つことはできないのでしょうか??》



 余談になりますが、2004年、ボーイスカウト日本連盟の23カ国海外スカウト受け入れ計画の手伝いで、私は初めてブータン人のスカウトと話す機会がありました。当時、ブータンについての知識がほとんどなく、言葉が通じるか不安でしたが、17歳と18歳の高校生年齢の2人の少女は、英語がネイティブかと思うような英語を話していました。本当に驚きました。国の方針で、小学校1年生から、英語で授業を受けているということでした。
 段階的に英語だけを使った授業を進める国とは、日本の事情は大きく異なると思いますが、「英語を話せる」ということは、英語ネイティブではなく、色々な国の人と話せるチャンスが広がります。生徒達が、国際人になれるかどうかは、英語の先生方のご指導にかかかっていると言って過言ではないと私は思います。色々お忙しいことと思いますし、やる気のない生徒も居て大変でしょうが、そのことを忘れずにご指導いただけたらと思います。



2)読解の授業と単語テストについて

①読解/スラッシュリーディングを教える必要があるのでは?

 塾講師をしてきて、生徒の英文の読解力が下がってきていると感じることがよくあります。特に、少し複雑な英文になると、何が主節の主語と動詞なのかも、把握できないのです。
そのような中、塾に初めて来た
生徒の読解力を簡単に見極める方法がわかってきました。それは、学校のリーディング(読解)用の教科書の音読と直訳をしてもらうのです。生徒の発音の正しさと英文の理解度が、即座に把握できます。学校で直訳、特にスラッシュリーディングの練習をしていないと、生徒は正しく英語を理解しながら速読することが出来ません。

 
スラッシュリーディングを教えるか教えないかは、学校ごとと言うより、先生によって決められているようだということがわかってきました。同じ学校で、同じ学年なのに、先生によって教え方も副教材も異なっている事さえありました。大きな問題と感じます。

《生徒に聞いた実際あった公立高校の例》 1人の先生は、授業でスラッシュリーディングを教えてくれて、それに沿った副教材のプリントを生徒に渡したそうです。生徒は英文の構造と意味が理解しやすかったと言っていました。しかし、もう1人の先生は、直訳はせず、訳は本文を意訳したプリントを渡すだけで、どうして英文がそのような意味になるか、生徒は理解できなかったそうです。私の塾の生徒は、高2で前者の先生に習い、英文の意味を理解できるようになったが、高3で後者の先生の授業を受けるようになり、「学校で英語の授業を受けると、英語が全くわからなくなる」と嘆くようになりました。(2015年4月)

 関連ページ:効率的な英語の指導法はなぜ浸透しないのか?

 
一部の塾や高校で行われているスラッシュリーディングは、英語の速読だけでなく、リスニングにもスピーキングにも役立つことがわかってきました。私は、ある時期から、中学生にもスラッシュリーディングを教えるようになりましたが、これができるようになると、生徒の英語力が大きく伸びました。生徒の英語力に関係なく、どの生徒にも効果がありました。さらに英語の得意な生徒は、速読力が飛躍的に伸びました。先生方には、是非、スラッシュリーディングの指導をお願いしたいです。
 スラッシュリーディングについてはこちら

《メモ: 教科書採択について》 文科省の通知には、「高等学校においては,採択に当たり,各学校ごとに教科書の調査研究が行われているが,中には必ずしも生徒の実態に即した教科書が採択されていないような例も見られる。都道府県教育委員会は,採択権者として各高等学校に対して十分な指導・助言を行うことができるように,高等学校用教科書のための調査・研究組織を設けるなどして恒常的に教科書の調査研究を行っていくことが望まれる。」とあります。(2015年)


②単語テストについて


 単語テストをする先生としない先生がいるようですが、私は、
「英単語テストを毎週する」くらいな方が良いと思います。なぜなら、高校英語は単語力勝負であり、高校の時にどのくらいの単語力を付けられるかで、大学生や社会人になって、影響があると思うからです。しかし、高校生に接して思うのは、「語彙力のない生徒が多すぎる」ということです。「英単語を読めて意味がわかる」・・・これができないと、読解だけでなく、文法を教える時にも困ってしまうのです。

 また、その単語テストのやり方に問題がある先生も多いです。テストはやれば良いというものではなく、本当に生徒の知識定着に効果が出ているかを分析する必要があります。頭の良い生徒ほど、すぐ覚えてすぐ忘れていました。1日で覚えたら、1日で忘れ、2日で覚えたら、2日で忘れる感じです。
新出単語を長期記憶装置にとどまらせるには、1か月くらいは繰り返し、その単語に触れる機会を設けないと、あまり効果が出ません。また、ただ単語を覚えても、実際使うとなると、文脈の中で覚えなければ、役立たないことも多いです。

 記憶力について      単語力アップの秘訣

 私が塾で教える生徒には、「単語テストの前の一週間は、単語練習をしない」くらいの気持ちで単語テストに臨むように、指導してきました。私の意図を理解し、反復練習をしっかりできた生徒は、学校の単語テストの直前に頑張らなくても、そこそこの成績を取れるようになりました。知識が定着したのだと思います。しかし、「単語テスト」という目標があったからこそ、自分のやってきたことが間違っていないと確信し、自信を深めたのではないでしょうか。

 
単語テストは、生徒が単語を覚えようとするモチベーションアップに有効です。それをより効果的にするためには、「3週間前の範囲からも出すよ」などの工夫や、「できない生徒でも少しは点数が取れるような問題を作る」工夫が必要なのではないでしょうか。


《先生方へ》
 ここからは、先生方にお願いです。生徒ができなくても頭ごなしに叱ったりしないでください。「お前はできない。頭が悪い。」など、生徒の自尊心を傷つけることを言わないでください。生意気な生徒ほど、丁寧に理論的に諭してください。生徒ができなかったり理解できない場合、「自分の教え方、宿題の出し方、テストの作成の仕方に問題があるのでは」という視点を持って下さい。生徒を一人の人間として、敬意を持って接すれば、生徒は必ずついてきてくれます。生徒を見捨てないでください。
 以上、生徒から聞いたひどい先生方の話を思い出しながら書きました。生徒に信頼される先生方が増えることを願っています。



3)英語で進める授業のために役立つコンテンツ

 先生サイドから見ても、「英語で英語の授業を行う」というのは、簡単でない場合もあるのではないでしょうか。学校で使う英語は、社会人が日常で使う英語とは異なる部分も多いと思います。私は全国通訳案内士の資格を持っていますが、簡単なゲームのやり方を説明しようとした際に、意外と苦戦しました。何故なら、そのような経験が、今まであまりなかったからです。

 そこで、学校の授業で使えそうな英語をまとめてみようと思いました。
中学・高校で使われる英語の指示文
↑《当サイト内》 場面別、レベル別に、使える英文例をまとめました。小学生向けにも使える指示文などでも、中・高生に使えるものもあると思います。ご活用ください。

"Find the Word" (単語当てゲーム)の、英語でのゲーム説明
↑《当サイト内》 英語ネイティブのカナダ人に添削頂いた、英語でのゲームの説明方法です。ノンネイティブが考えると、簡単な説明の仕方も意外とむずかしいので、時間をかけて書き下ろしました。ご興味がある方はご覧ください。

JeN's Jyugyou/ジェンの授業
↑《カナダ人のYouTuberの動画》 テンポよく
、すべて英語で、英語の勉強のやり方や文法・語彙などを教えてくれます。聞き取りやすい話し方、英語字幕もあり、英検準2級以上の英語学習者には最適の動画と思います。きっちりした文法知識の上に成り立った授業なので、英語で英語の授業をする先生方にも、とても参考にもなると思います。

 以前、文科省のサイトから、「各教育委員会などホームページ→神奈川県立総合教育センター→Check it!英語のページ・新しい教材掲載しました→ALTが作成した教材の紹介・ゲーム集」というページを苦労して見つけました。それは小学生のための英語でのゲーム説明などですが、ネイティブらしい英語表現で書かれ、日本人がこの英語を書くのは相当大変だな~と感心したものです。リンクも控えておいたのですが、今は残念ながら行方不明になってしまいました。

 正直言って、先生方の指導力は様々であり、それもまた仕方のないことでしょう。ですから、前にも書きましたが、
先生方へのサポート、例えば、生徒のレベル別に英語で指導するための例文集や用語集など、良いマニュアルが必要と思います。良いマニュアルがあれば、先生方の実力に関係なく、生徒達に平等に、良い授業を提供できる手助けになると思います。文部科学省提供のサイトなどでも、参考になりそうな授業の紹介が出ていましたが、なかなか「これ!」というものは見つかりません。どこをどう参考にしたら良いのか、分かりにくい気がします。

 第3者が正当に評価し、先生方が参考にし易いサイトにできたら、先生方の負担が少なく、より良い授業を提供できる本当の意味でのサポートになると思います。それは、システムさえ整えられれば、それほどむずかしいことではないと思うのですが、なかなか前に進まないというのが私の印象です。民間業社との兼ね合いなどもあって、むずかしいのでしょうか?