1 中学校の英語教育について
8)その他、生徒指導で、問題と思われること
記述式の解答に、部分点を与えない。
1箇所でも間違えたら、0点?! (2015.3/2017.3/2020.7改訂)
千葉県では、高校入試の英語の記述問題の採点基準が非公開になっています。そのため、千葉県内の多くの中学校の実力テスト(学力テスト)で使っている業者は、割と良く書けている英作文でも、1つでも間違えがあれば、部分点を与えず、0点で採点するということがわかりました。(2015年3月現在)
@2015.3記述式問題で、1箇所でも間違えたら0点となった実例
書く力、話す力…日本人の英語力の実情
A2015.4-5この問題に関する市教育委員会とのやり取り
B2015.5千葉県教育委員会とのやり取り
C2015.6上記に関して、千葉県教育委員会の最終回答
D2015.6最終回答を受けての私の考えと、各所に出した要望
1)最終回答を受けての私の考え 2)千葉県教委へ 3)市教委へ
4)文科省へ 5)群馬県でも採点基準非公開(2017.3)
E2017.9この問題のその後と私の考え
…読んでいただけると幸いです。
F2017.9中学校の英語の先生方へ
…学校の先生方に読んでいただけると幸いです。
公立高校入試の採点基準の公開・非公開について
採点基準を公開している埼玉県と、公開に関する私の考え
採点基準を公開している東京都教育委員会 (外部サイト)
採点基準を公開していない群馬県からの情報
公立後期入試・採点基準の現場を歩く(外部サイト)
「 みんなの学校新聞編集局様サイト」内
私の意見も、取り上げていただきました。( 2017.03.02)
《書く力、話す力…日本人の英語力の実情》
2015年3月17日付け、読売新聞の記事によると、文部科学省の、全国の国公立の高校3年生約7万人を対象とした英語テストの結果で、「書く」力のレベルの低さが明らかになったとのこと。高校3年生の「書く」力のレベルは、準2級相当が12.8%、3〜5級相当が86.5%、そのうち0点が29.2%(約2万人)とありました。中学3年生対象のテストかと疑ってしまうようなレベルです。しかし、中学での指導の様子を考えると、納得できる数字です。(このテストの採点が、一箇所でも間違えたら0点でないことを祈りますが…)
2020年7月22日付け、読売新聞の記事によると、TOEICを運営する国際ビジネスコミュニケーション協会が公表した「TOEIC S&W」の2019年の国・地域別平均スコアが、日本はスピーキングで19か国・地域中17位、ライティングは18か国中最下位だったとのことです。ライティングはタイ・韓国・中国にも及ばなかったとのこと。(各200点満点/受験者が50人以上の国・地域の平均点のまとめ/Sのトップはドイツの171点、日本112点/Wのトップはハンガリーの178点、日本132点)
受験者数が示されていなかったので、数字としての信頼度に疑問は残りますが、日本人の英語を話す力と書く力が低いということを示す1つの指標にはなると感じました。
参考:英文和訳・英作文の指導について
文科省が昨年夏に行った全国の国公立高約480校の英語テスト結果で、「書く」の9割近くが「5〜3級」の中学レベルで、さらに、全体の29%の生徒が0点と新聞で読みました。問題の形式はわかりませんが、「書く」は記述式でないと正しい判断ができないと思いますが、どのように採点されたか、特に部分点がついているか、採点基準はどのようになっているかの問い合わせです。
千葉県のある公立中学では、業者(市教委の話では、千葉県の9割近くが使っているとのこと)が作成する学力テストを採用していますが、1箇所でも間違えがあれば、0点と採点されてしまいます。業者の話では、「入試では、各学校において統一した基準により採点する。部分点を付けない学校もある。採点基準が学校によって違うため、実力テストでは、部分点は与えない。」とのことでした。ある程度、良く書けている英文も、少しのミスで0点と採点されてしまいます。これが、本当に「会話力向上」につながるのでしょうか。
「書く」問題の採点基準をどのようにすれば、生徒の英語力向上に資するのでしょう。基準が既に出ているなら、どこを見れば良いか、教えて頂けると幸いです。
*2015年5月21日現在、回答なし。千葉県教委の回答も踏まえ、「すべての自治体に採点基準を公開するように指導できないか。」という、質問も付けて再送。
→2015年12月31日現在、回答なし
5)群馬県でも採点基準非公開!
2017年3月2日に、群馬県の高校入試情報を中心に記事を配信している地域メディア「みんなの学校新聞」の中の、【公立後期入試】採点基準の現場を歩く という記事の中で、私の意見を引用いただきました。群馬県でも採点基準の公表をしていないということで、情報公開の流れが浸透していくことを願うばかりです。
E2017年、この問題のその後と私の考え
2017.8.30
2015年5月にも、千葉県立高校入試の英語の記述式問題の採点基準を公開してくださるように、要望を出しました。《中略》あれから、どうなったかお聞きしたく、メールしています。
以前の回答の繰り返しになりますが,英語学力検査の記述式問題は,県全体で統一
2017.9.5 私の考え:
千葉県の公立高校入試では、埼玉県や東京都に倣って、「統一採点基準を作り、採点基準を公開すべき」と思います。
学校の先生方にとって、生徒の志望校相談というのは、長い教員生活の一瞬の出来事かもしれませんが、一人の生徒にとって、高校受験は一生に一度のことです。だからこそ、「志望校を決める学校の実力テストで、採点基準が明確でないから、記述式問題に部分点が与えられず0点にされ、担任に志望校の変更を迫られる」というようなことは、あってはならないことと思います。
さらに、上にも書きましたが、2015年の文部科学省調査では、高校3年生でさえ、「書く」力のレベルは、3〜5級相当が86.5%、そのうち0点が29.2%とありました。 「自分から話せる英語」につながる能力を正しく測るには、現状では、「記述式問題」しかないと思います(整序問題や穴埋め問題で測るのは無理)。 しかし、記述式問題の採点には、採点者の十分な英語力が求められます。今の日本で、誰もが満足のいく採点者を揃えるのは、かなり難しいことと思います。
このような状況下で、各校が、高校入試で設けている採点基準がバラバラでは、模試で採点する業者や先生だけでなく、中学で英作文指導をする先生方にとっても、指導がむずかしくなるのではないでしょうか。基準がなければ、採点する際、余計な時間がかかり、指導する際も、生徒に注意点を示す根拠が明確でなくなってしまいます。採点基準が不明確だから、記述式問題に部分点をつけない業者が現れたり、「どうせ0点なら、記述式問題はパスする」というような生徒が出てくるのです。
先生方の指導力を一律に上げるのはむずかしくても、統一の採点基準を設け、それを公開することは、ずっと簡単で有意義なことと思います。
なぜ、千葉県では、公立高校入試の統一の採点基準を作らず、非公開なのか?失礼を承知で、考えてみました。
今回の件では、英語の先生・担任の先生の対応、採点業者の資質、千葉県の採点基準非開示の問題など、色々なことが絡んでいることがわかりました。問題解決は容易でありません。しかし、すぐ解決できることが1つあります。それが、「公立高校入試は、統一採点基準を作り、採点基準は公開する」ということです。
埼玉県のように、熱心な県議会議員の方が、議会に改善を提案し、県議会で話し合われたというのは、羨ましい話です。ただ、県議会議員の方、さらに県の教育委員会の方々の中に、英語が堪能で、県内の英語教育にも精通していらっしゃる方は、いったいどのくらいいらっしゃるのでしょう。日本人にとって、英語は特別な教科と思います。多くの人が英語が堪能ではないのですから、教科書選定同様、素人では、理解できないことが多いのではないでしょうか。
私自身、通訳案内士の資格も持ち、小学校から大学受験生までの生徒を11年指導した経験があります。しかし、英語が堪能と言える水準には至っていないと思っています。普段、英語を使わない環境にいる日本人には、仕方のないことかもしれません。そんな中、「採点基準非公開」を訴えている方々の英語力の水準は、どのくらいの物なのか、失礼ながら考えてしまいます。私が在住する市の教育委員会・学校教育課指導室には、数年前まで、英語担当の方は英語教育の経験のない方でした。4〜5人ほどで、市内8小学校と5中学校を見ているので大変だということでした。その人手不足加減が大変だと思いました。現在、1名は元英語教員の方が入っていますが、1名だけが英語をわかっている状況で、いったい、何ができるのでしょう。そこで、思い至ったのは、千葉県教育委員会でも、県内の英語教育の状況を踏まえ、効率的な英語教育行政に結び付けられる方は、十分な人数いらっしゃるのかと言うことです。
これだけのことを調べても、一市民の訴えは、門前払いです。「採点基準公開要望」について、本当に会議をし、真剣に考えてくださっているとは思えません。 「統一の採点基準を設けない」「採点基準は非公開」という千葉県教育委員会の対応は、本当に理解に苦しみます。一番不利益を被るのは、生徒たちです。本当に、残念です。
F中学校の英語の先生方へ
学校の先生方は、多様化する生徒を相手に、大変であることは重々承知しています。一般企業と違い、著しい成果を上げても、昇給はおろか、正当に評価されないことも多々あるという話も耳にします。しかし、子供たちは、学校の先生方から、非常に大きな影響を受けます。一部の生徒としか接しない塾講師などとは違います。日本の将来が、先生方の肩にかかっていると言っても過言ではないと思います。
英語は他の学問とは違い、指導次第で、勉強が苦手な生徒でも、楽しく学ばせ、簡単な英会話をできるようにさせることは、不可能ではないと思います。塾講師をしていて実感しました。どうぞ、効率的に英語を学べる方法を、生徒達に教えてあげてください。中学レベルの英語はそれほどむずかしくなく、中学でレベルの英文法というのは、英会話をする上でとても役立つということを、生徒たちにお伝えください。
中学で、どの位のレベルの英語力を身に着けられるか、高校受験だけでなく、大学受験、そしてその先にまで、大きく影響していることを実感しました。優秀な理科系の人材が、英語ができないために、英語での論文作成などに苦慮し、国際社会に出て行きにくいという話も聞きます。どうか将来を担う生徒達が、たかが英語のために道を閉ざされないように、十分な英語力をつけられるようにご尽力ください。塾の講師の力など、微々たるものです。学校の英語の先生方のお力が、何より必要です。
以上