課題1:「写真を見て会話を進める」
課題2:「病気関連の会話」
課題3:「手話関連情報の伝達/2024年5月」
課題4:クイズをしながら手話を覚えよう!
(高校生以上の手話体験学習教材)
課題5:「聾者が日常生活で困ること」
(高校生以上の手話体験学習教材)
病院で使う手話はこちら
課題1:「写真を見て会話を進める」 「聾者」「手話が堪能な人」「手話を勉強中の人」でグループを構成し、写真に関係して手話で会話文を練習する課題です。 |
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①グループ内で写真と台詞(せりふ)を見ながら、1人1文ずつ、交替で手話で表してください。むずかしい文はグループ皆で協力して考えてみてください。 ②「場所」と「日時」などを尋ねる疑問文は必ず入れてください。また、日本語の言い回しにとらわれず、内容の伝わる手話表現を考えてみて下さい。 ③15分くらいしたら、各グループごとに全員で前に出て、写真を囲んで、初めは声を出さずに口型と手話だけで発表をしてください。2人の会話ですが、今回は練習なので、Aサイド、Bサイドに分かれるなど、全員が発表できるように交替でお願いします。 2度目は声をつけてやってみてください。 ④見ている人は、伝わりやすい表現などについて、アドバイスがありましたら、お願いしたいと思います。 |
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① | ![]() |
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A「わ~、きれいだね~。これは何の花?」 B「マンゲツロウバイだよ」 A「ここはどこ?」」 B「埼玉県所沢市の航空記念公園だよ。 園内には約100本のロウバイが植栽されているんだって。」 A「いつ行ったの」 B「2月7日の水曜日。」 A「雪の白と花の黄色と空の青のコントラストが素敵だね。」 B「そうだね~」 A「最寄りの駅はどこ?」 B「西武鉄道の航空公園駅。 実は、西武鉄道主催のウォーキング&ハイキングで、公園の後、所澤神明社(ところざわしんめいしゃ)を経て所沢駅まで歩いたんだ。」 A「どのくらい歩いたの?」 B「6km(6キロ)」 A「すごいね~」 |
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《手話通訳の際のヒント》 *固有名詞を表す時は、しっかり、口型をつけることを忘れずに! *約100本のロウバイが植栽されている→花/100くらい/ある *雪の白と花の黄色と空の青のコントラスト→指3本で3つの色を表しそれぞれの指を示しながら説明/コントラスト=対比 *ウォーキング&ハイキング→ハイキング(手の平を向かい合わせて少し前後させ、人が歩いて行く様子)を示す表現だけでOK |
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② | ![]() |
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A「わ~、きれいなだね。これは梅?」 B「そう、梅だよ」 A「ここはどこ?」」 B「東京の小石川後楽園(こいしかわこうらくえん)だよ。東京ドームがかすかに白くみえているの、わかる?」 A「本当だ!」 A「いつ行ったの?」 B「私が行ったのは2月14日の水曜日。 2月3日から3月3日まで、梅まつりが開催してるんだ。」 A「混んでた?」 B「人は多かったけど、広い庭園だから気持が良かったよ」 A「最寄りの駅はどこ?」 B「JRの水道橋駅(すいどうばし)から歩いて10分くらいよ」 A「私も行ってみよう!」 |
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《手話通訳の際のヒント》 *固有名詞を表す時は、しっかり、口型をつけることを忘れずに! *後楽園:「遊ぶ」+「場所」 *東京ドーム:「東京」+「右手で指文字のトを作って、左から右に、ドームの屋根の弧を描くように動かす」 *梅まつり:「梅」+「花」+「祭り」…花を鑑賞するイメージも取り入れる *水道橋:「水道(右手を下向きにして蛇口ひねる仕草)」+「橋」 |
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③ | ![]() |
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A「これは何?」 B「梅宮神社の甘酒まつりで見た、西方囃子(にしかたはやし)だよ」 A「梅宮神社?どこにあるの?」」 B「埼玉県の狭山(さやま)市だよ」 A「お囃子(はやし)はどうっだった?楽しかった?」 B「お面(めん)がおもしろかったよ」 A「甘酒は飲んだ?」 B「うん。とってもおいしかった」 A「いつ行ったの?」 B「2月11日の日曜日。 実は、西武鉄道主催のウォーキング&ハイキングで、狭山市駅から入間川(いるまがわ)沿いを歩いて、神社に行き、新狭山駅まで歩いたんだ。」 A「どのくらい歩いたの?」 B「2時間半くらい」 A「すごいね~」 |
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《手話通訳の際のヒント》 *固有名詞を表す時は、しっかり、口型をつけることを忘れずに! *囃子:横笛を吹いたり、鼓(つづみ)を叩いたり、踊りの仕草を入れる…目に見えるイメージ *お面=仮面(右手の平で面の表側を持ち、裏面を相手に向けてから手首を軸に手前に返して自分の顔に面をつける仕草) *実は:日本語通りだと「本当は」をつけるが、手話に直す時に必要かどうか?? *ウォーキング&ハイキング→ハイキング(手の平を向かい合わせて少し前後させ、人が歩いて行く様子)を示す表現だけでOK |
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④ | ![]() |
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A「わ~、すごい斜面(しゃめん)だね。ここはどこ?」 B「湯沢高原(ゆざわこうげん)スキー場だよ」 A「下に見える長いねずみ色の建物は何?」 B「あれは上越(じょうえつ)新幹線の湯沢(ゆざわ)駅だよ」 A「じゃあ、奥の山の裾野(すその)を走っているのは関越(かんえつ)自動車道?」 B「そうだよ。左手前が新潟方面、右奥が東京方面だよ」 A「いつ行ったの?」 B「2月3日の土曜日」 A「混んでた?」 B「うん、コロナの時は空いてたけど、今回はリフトも並んでたよ」 A「外国人は多かった?」 B「うん、半分以上、外国人という印象だった」 A「へえ~」 |
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《手話通訳の際のヒント》 *固有名詞を表す時は、しっかり、口型をつけることを忘れずに! *高原:「高い」+「原(右手の平を下に向け大きく水平に動かす)…ただし、おでこの前の高い位置で表す」 *長いねずみ色の建物…実際の建物の長さや大きさを手の形で表現すると伝わりやすい。 *関越自動車道→「関越」+「ハイウェイ/高速道路(「速い」+「まっすぐで広い道路」)で表現 *リフトも並んでたよ…両手の平を、指先を上にして向かい合わせ人々が居る様子を表せるので、もし何列にも広がって並んでいた場合でも、手話だと一瞬で様子を表現できる。手話表現の豊かさかと… |
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課題2:「病気関連の会話」 「聾者」「手話が堪能な人」「手話を勉強中の人」でグループを構成し、 病気に関する手話を使って会話文を練習する課題です。 ![]() |
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①グループ内で、1人、1文ずつ、交替で手話で表してください。むずかしい文はグループ皆で協力して考えてみてください。 ②日本語の言い回しにとらわれず、内容の伝わる手話表現を考えてみて下さい。 ③15分くらいしたら、各グループごとに前に出て、初めは声を出さずに口型と手話だけで発表をしてください。 2度目は、声をつけて発表してください。 ④見ている人は、伝わりやすい表現などについて、アドバイスがありましたら、お願いしたいと思います。 |
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① | A「昨日の夕方、あなたの家のお隣(となり)に救急車(きゅうきゅうしゃ)が来たけど、どうしたのか知ってる?」 B「おじいさんが突然倒れたんだって。」 A「え~。大丈夫なの?」 B「脳出血(のうしゅっけつ)を起こしたらしいよ。でも、処置(しょち)が速かったから明日退院できるみたい。」 A「血圧(けつあつ)が高かったみたいだよね。でも良かった。」 B「それが、そうでもないんだよ。」 A「え~。何で~?」 B「看護師(かんごし)さんがきれいで優しいから、退院したくないんだって。」 |
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《手話通訳の際のヒント》 *同じ「え~。」と言う表現も、顔の表情でどのような感情かを表すことが大事。 *「救急車、脳出血、血圧」など、病院関連ワードは、以下のアプリがおススメ! ![]() …2024年3月最終週より仕様が変わり、使い勝手がとても良くなりました。単語を入れるとCGで手話表現が360度の角度から見れ、速度も自由に変えることができてます。何度もくり返し見れるのも便利です。 |
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② | A「あなたのお母さん、最近元気そうだね。」 B「そうなの。前は病院嫌いだったけど、最近ちゃんと通って、薬飲んでいるんだ。」 A「へえ~すごいね~。何の薬を飲んでいるの?」 B「降圧薬(こうあつやく/血圧(けつあつ)を下げる薬)とコレストロールを下げる薬だよ。」 A「ちゃんと病院に通っていって、偉(えら)いね~。」 B「いや~、これには訳(わけ)があるから。」 A「え~どんな訳?」 B「担当のお医者さんがカッコいいんだって」 |
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《手話通訳の際のヒント》 *「何の薬を飲んでるの?」→「薬、種類、何?」でOK *「降圧剤」→「血圧、下げる、目的(ための)、薬」 *「これには訳があるから」→「本当の理由は違う」と表すと簡単? |
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③ | A「息子さん、松葉杖(まつばづえ)をついてたけど、どうしたの?」 B「バイクで転んだんだよ。」 A「え~!じゃあ、脚(あし)の骨を折ったの?」 B「そうなんだよ。きれいに折れたから、手術(しゅじゅつ)しないですんだんだ。」 A「病院通い(かよい)が大変だね。」 B「いや~、そうでもないんだよ。」 A「何で~?息子さん、大変だよ、きっと。」 B「病院の待合室(まちあいしつ)に、大好きな漫画(まんが)がたくさんあるんだって。」 |
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《手話通訳の際のヒント》 *「きれいに折れたから、手術しないですんだんだ」 →「折れた所(場所を指しながら)/きれい/だから/手術/必要/なかった」と表すとわかりやすい? *「息子さん、大変だよ、きっと」 →(息子の位置を決めて指差しながら)「きっと(絶対)、大変」と表すとわかりやすい? |
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④ | A「お宅(たく)のお父さん、入院したんだって?」 B「そうなんだ。健康診断(けんこうしんだん)で、白内障(はくないしょう)の手術(しゅじゅつ)をすすめられたんだ。」 A「なんだ、白内障かー入院が必要なの?」 B「片目ずつの手術ならば、日帰りもできるんだけど、親父(おやじ)は、両目いっぺんに手術することにしたから、入院が必要なんだ。」 A「へえ~。何日入院するの?」 B「3日間。」 A「嫌がってない?」 B「全然(ぜんぜん)。病院の食事が、家の食事より美味(おい)しいんだって。」 |
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《手話通訳の際のヒント》 *健康診断で→健康診断を受けたという事なので、診断する様子を表す人差し指と中指を自分向きに向けて表す。 *手術を勧められた→「勧める」が出てこなければ、「手術が良いと言われた」と表してもOK *「嫌がってない?」と聞かれて「全然」は、ただ勢いよく手を振っても表せる。 *病院の食事と家の食事を左右別の空間で表し、2つを比べて表すとわかりやすい? |
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課題3:「手話関連情報の伝達」 2024年5月 「聾者」「手話が堪能な人」「手話を勉強中の人」でグループを構成し、 手話関連のネット記事を手話での伝達方法を考える課題です。 *個人的にこの時期にサークル内でシェアをしたい話題からピックアップしました。 |
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①各グループで協力して、手話表現を考えてみてください。 ②日本語の言葉にとらわれず、内容が伝わるように考えてみて下さい。情報が多すぎる場合は、適当に省略してください。 ③15分くらいしたら、各グループごとに前に出て、初めは声を出さずに口型と手話だけで発表をしてください。 2度目は、声をつけて発表してください。 ④見ている人は、伝わりやすい表現などについて、アドバイスがありましたら、お願いします。 |
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① | 2024年3月12日の読売新聞記事 / ![]() |
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①日本手話をオンラインで学習できるサービス「サインアイオー」を開発した伊藤浩平(いとうこうへい)さんについてです。 ②伊藤さんは、生まれつき聴こえないのですが、両親が聴者で、家族や同級生との会話は「口話」が中心で、苦労したそうです。 ③手話を覚えたのは、筑波大付属ろう学校の高等部に進学してからで、手話だと情報がほぼ100%わかる感覚があり、世界が変わったそうです。ただ、この時使っていたのは日本語の文法・語順に合わせた手話とのこと。 ④27歳の頃に日本手話と出会い、スムーズにコミュニケーションが取れるようになり、「自分の本当の気持が話せる言語だ」と思ったそうです。 ⑤ろう・難聴者の親は9割が聴者とのことで、日本手話に触れる機会がない人のためにも、「サンアイオー」をもっと充実させたいとのことです。 |
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② | 2024年5月29日(水)のオンラインイベント / ![]() |
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①6月21日から30日まで、沖縄県で開催されるデフバレーボール世界選手権大会を盛り上げるために、ボランティアができることを考え、交流する企画です。 ②5月29日(水)19:00-20:30、Zoomを利用したオンラインで行われます。 ③内容は、デフバレーボールの歴史、日本代表へのインタビュー、大会を盛り上げるためにボランティアができることを考えるなどです。 ④デフリンピックに向けて、国際手話を学べるミニ講座もあります。 ⑤締め切りは5月28日(火)9:00am。 参加は無料で応募いただいた方全員参加できますが、日本財団ボランティアセンターの「ぼ活!」に無料会員登録が必要です。 |
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③ | 2024年9月公開の映画 / ![]() |
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①「ぼくが生きてる、ふたつの世界」という映画についてです。 ②主演は、NHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」でも主演した、吉沢亮(よしざわりょう)さんで、宮城県生まれのコーダの役を演じます。 ③ろうの母親役を忍足亜希子(おしだりあきこ)さん、ろうの父親役を今井彰人(いまいあきと)さんが演じますが、特筆(とくひつ)すべきは、2人とも本当のろう者ということです。 ④全国ロードショウ―の映画の主要キャストに、ろう者が抜擢(ばってき)されるのは、とても素晴らしいことと思います。 ⑤原作は、実際にコーダの五十嵐大(いがらしだい)さんの、「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」(幻冬舎)です。 今年の9月公開予定なので、多くの人に見て欲しいです。 |
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課題4:クイズをしながら手話を覚えよう! (高校生以上の手話体験学習教材) |
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聾者(ろうしゃ)の使う手話や指文字を、練習してみましょう。 *途中で「よく見てください」「わかりましたか?」の声かけを! |
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2024年7月18日(木) ① 手話で自己紹介してみよう! 初めに、皆(見学者)で練習してみましょう。(時間の都合上、苗字だけ) …私の名前は「 」です。よろしくお願いいたします。 *名前は、耳の聞こえない聾者がパッと見て理解できることが重要なので、漢字に関係なく表したり(佐藤は「砂糖」の手話で表す)、歴史上の人物(佐々木は「佐々木小次郎」から)から着想を得て表すこともあります。 問題1: 「食べる」の手話…これはどういう意味でしょう? …「食事」「ご飯」「食べる」色々な意味があります。 *「手話」は耳が聞えなくても、瞬時に多くの情報を伝えられるように工夫された言葉です。そのため、1つの単語で色々な意味を持つ言葉が多いので、口型(こうけい/唇の動き)をしっかり付けて、使い分ける必要があります。 *枕から頭をはずす…「朝」「起きる」 *時計の長針と短針が真上で重なる…「昼」「正午」 *両手の平をを相手側に向けてから顔を覆う…「夜」「暗くなる」
問題3:人差し指を向かい合わせて曲げる…これはどういう意味でしょう? …「挨拶(あいさつ)」…人が向かい合って頭を下げる様子 *「朝」+「あいさつ」 = 「おはよう」 *「昼」+「あいさつ」 = 「こんにちは」 *「夜」+「あいさつ」 = 「こんばんは」 *両手の平を相手側に向けてから、指のつけ根で同時に曲げる。 …生徒が一斉に頭を下げる場面 *「始める」 +「問題5の挨拶」 = 「始業式」 *「暗くなる」+「問題5の挨拶」 = 「終業式」 *親指を立てると「男性」や「人」、小指を立てると「女性」を表します。 …「人々」 …「人気がある」「ファン」…指で人が殺到する様子を表します。 …指の動きや顔の表情で加減を表せます。表情は特に大切です。 《余談》「ボランティア」は、人が一緒になって歩くように表現します。以前は「助ける、手伝う」を使って表現でしましたが、今は「共に歩く」イメージになりました。手話も時代と共に変わります。 …久しぶり(=Long
time no see!と、英語の考え方と似ている? ) *ものすごくお久しぶり~ …指の動きや顔の表情で加減を表せます。表情は特に大切です。 …混んでいる *ものすご~く混んでいる …指の動きや顔の表情で加減を表せます。表情は特に大切です。 *手を体の前方に動かすことで未来、後方に動かすことで過去を表せます。 *今日 - 昨日 - 明日 *一昨日(おととい) - 明後日(あさって) *今週 - 先週 - 来週 *ずっと昔 - ずっと先の未来 |
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課題5:「聾者が日常生活で困ること」 (高校生以上の手話体験学習教材) |
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聾(ろう)者が日常生活で困(こま)ることは何だと思いますか? グループに分かれた後、できるだけ手話を使って、場面別に考えてみて下さい。 ①レストランで ②電車の中で ③街の通りで ④病院で ⑤エレベーターで ⑥家で |
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《解答例》 実際に聾者から聞いた話をまとめてみました。なかなか気づけないこともあるかと思いますので、お読みいただけると幸いです。 ① レストランで A: 聾者はステーキを切る時など、耳が聞こえないので、自分で出している音がわからない。そのため、知らないうちに聴者が嫌がる音を出してしまうことがある。 《これは意外と気がつかないことかと思います。また、聾者は声を出せないわけではないので、驚いた時など、思ってもいないような声が出てしまう時もあるでしょう。そんな時、嫌な顔をされるのではないかと危惧(きぐ)します。》 B: 呼び出しボタンがない店の場合、飲み物や食べ物を追加したいなどで店員さんを呼び止めたい時、簡単ではない。 フリードリンクの機械が故障していた時、店員さんに知らせるために肩を軽く叩いて呼び止めようとしたが、嫌な顔をされてしまった。 《聾者の世界で、声をかける意味で人に触れたり、人に向けて指差しすることは、必要不可欠なことなので、非常識なことではありません。多くの人に聾者への理解を深めて欲しいと思った出来事でした。》 ② 電車の中で A: 聾者は車内アナウンスが聞こえないため、電車がどこを走っているのか知るのがむずかしい。ろう学校への長距離通学をしていた時、電車が混んでいて窓の外の景色が見えず、降りる駅がわからず困ったこともある。 《今では、各車両内に電光掲示で、次の到着駅名や、車両がどこを走っているかなどを、わかりやすく表示される路線も見受けられるようになりましたが、聾者にとっても、とても助けになることなのだと改めて思いました。》 B:人身事故などで電車が止まってしまった時など、車内や駅の構内のアナウンスが聞こえず、状況を把握するのがむずかしい。とても不安に感じる。 ③ 街の通りで A: 聾者は後ろから来る車の音が聞こえない。もし、狭い道でクラクションを鳴らされても、聞こえないので、素早くよけることができない。よけれないために怒鳴られたこともある。 B: 現在、自転車は、基本的には車道を走ることになっているが、後ろから来る車の音が聞こえないので怖い。ダンプカーなどの大型の車が後ろから近づいていてもわからないのでとても危険。 ④ 病院で A: 聾者は、病院の受付で呼ばれても、耳が聞こえないので気がつかない。そのため、いつまで経っても順番が回ってこないので、困ったことがある。 《「耳が聞こえないので、目の前まで呼びに来て欲しい」と、あらかじめ受付で伝えておくと、うまく対処してもらえるケースも増えたとのことのことです。》 B: 「眼科」を、「がんか」でなく「めか」と勘違いして困ったことがある。 《こんな間違えはあり得ないように思えますが、実際あったとのことでした。日本語には同じ漢字でも、「音読み」と「訓読み」など色々な読み方があり、耳からの情報を得られない聾者には、聴者の想像以上にむずかしいことのようです。 一度、知り合いの聾の女性が、近所の菓子屋の「オランダ家」の話を、私に伝えようとしたことがありました。彼女は 「オランダケ」 と、まず指文字で表現したので、私は彼女が何の話をしたいのか、初めは全く理解できませんでした。「ケ」の代わりに「家」という漢字を空書きしてもらい、初めて「オランダヤ」の話と理解できました。確かに、「家」という漢字は「や」の他に、「いえ」「け」「か」と、色々に読めます。街角の看板にはフリガナは入っていず、友人などとの会話で「オランダヤ」と聞くこともできなかったら、わからなくて当然です。 音声情報を得られない聾者の普段の生活では、正しい漢字の読み方を知るのは、意外とむずかしいことなのだとわかりました。そんな困難な状況の中でも、知識豊富な彼女を、私は益々尊敬するようになりました。》 ⑤ エレベーターで 聾の女性がエレベーターに乗っていると、子供をだっこするなどで、手のふさがっていた男性が入ってきて、何か言われたけれど聞こえないので何もしなかった。するとその男性は、とても嫌そうな顔をした。「~階を押してください」と言っていたようだが、わからず辛(つら)かった。 聾者が、それ以外の身体障害者と一番違うことは、見た目で障害があることがわかりにくいということ。そのために誤解されることも多い。 ⑥ 家で A: 聾者は目覚まし時計の音が聞こえないので、聴者と同じような方法では起きられない。以前は、朝起きられるように、布団(マット)の下に、振動を感じられる目覚まし時計をおいたり、朝日がわかるように、カーテンを開けたままにしておくなど苦労した。 《今では、スマートウオッチのように、振動機能を備えた機器を使うことができるので、かなり便利になったとのことです。》 B: 宅配便の業者が来た時、ろう者はインターホンが聞えないので気付けない。 《今は、インターホンを鳴らすと点灯するような機能を持つ機械があり、自治体から器具の取付の際、補助金が出ることもあるとのことです。》 C: 家に限ったことではありませんが、災害時に、緊急警報やサイレンに気付けない。 《隣の家の人に教えてもらって、何とか助かったという話も聞きました。》 |
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